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田舎暮らしの本 10月号

9月2日(金)
850円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

銀行を辞めて、ひじき漁師に。過疎の島で複業を実践する「現代の百姓」【山口県周防大島町】

瀬戸内海に浮かぶ周防大島(すおうおおしま)、そのさらに南端にある沖家室島(おきかむろじま)。銀行員から転職して、ひじき漁師など、十数個の仕事を持ち、“合わせ技”で生計を立てている栄大吾(さかえだいご)さん。「過疎高齢化の地域こそ、時代の最先端」と話す、その真意と過疎の島の可能性、暮らしぶりを伺った。

掲載:2022年1月号

栄大吾

国内最高級と誇る「沖家室ひじき」を手に栄大吾さん。「ひじき漁や畑からウェブ制作、講演まで。複数の仕事をこなす“現代の百姓”です」と笑う。「沖家室ひじき」15g×3パックで3465円。

周防大島

周防大島町(すおうおおしまちょう)
山口県の南東部、瀬戸内海に浮かぶ屋代島(やしろじま、周防大島)を中心に5つの有人島と25の無人島からなる町。屋代島は大島大橋によって柳井市とつながり、屋代島と沖家室島(おきかむろじま)は沖家室大橋でつながっている。人口は約1万5000人。山陽自動車道玖珂(くが)ICより町の中心部まで約30分、岩国錦帯橋空港より車で約40分。

 

過疎高齢化の進んだ地方こそ最先端

 瀬戸内海に浮かぶ周防大島に2018年に移住し、その南端にある人口約100人の沖家室島で活躍している栄大吾さん(32歳)。沖家室島は、古くから漁師町として栄えた海の要衝。栄さんが製造・販売している「沖家室ひじき」は、その豊かな漁場で育ったひじきの新芽のみを選りすぐって使用したもの。栄さんのひじきの師匠は、沖家室島の自治会長だ。栄さんが初めてひじき漁に連れていってもらったのは出会って1年経ってから。

「漁に連れていって大丈夫か見極めていらしたのだと思います。実際に漁に行ったら本当に命がけ。冬の寒いなか、午前1時ごろから磯に降りて、足場の悪い岩場のひじきを鎌で刈り取るんです」

 採ったひじきは一旦乾燥させ保存。商品化する際は、水洗いしながら塩を抜き、鉄釜で煮て天日干し。昔ながらの製法で、すべて手作業で行われる。できあがったひじきは、一般的なひじきの概念を覆す逸品。みずみずしく、やわらかい。「煮つけではなく、サラダでどうぞ」とすすめているのがよくわかる。

 栄さんは、神奈川県出身で、大学卒業後は政府系金融機関に勤務。結婚のタイミングで改めて人生を考えたときに、現場で実践者として生きていきたいと思ったそうだ。奥さんの実家がある広島県の周辺で、過疎高齢化の進む地域に絞って探すなかで、周防大島町を知った。町の生活を体験できる「お試し暮らし住宅」で有休を利用して10日間暮らすうち、地に足をつけて働く地域の人たちに触れ、ここで暮らすことを決めた。

「役場の方が、田舎暮らしのメリットだけではなく、マイナス点も含め現実をしっかり伝えてくださったことも決め手です」

周防大島

岩に生えたひじきを、潮が満ちる前に急いで刈り取る。1日で1t近く収穫するという。

沖家室ひじき

沖家室ひじきは、鉄の釜を使い鉄釘を入れて薪の火で煮込む。だから鉄分が豊富。「ゆでたては香りも味も絶妙です。ついつい食べてしまいます(笑)」と栄さん。

沖家室ひじき

ひじき漁師の仲間と。栄さんの周囲にある袋に、採ったばかりのひじきが入っている。

 過疎高齢化の地域の可能性を、栄さんはこう語る。

「過疎高齢化の地域こそ、時代の最先端です。日本の人口減少は進み、100年後ぐらいには明治時代ごろの人口まで減ります。人口が減りきったあとは、産業が興る前の生き方が指標になるはずです。そこで参考になる働き方が百姓や漁師をはじめとする個人事業主や家業です」

 現在、栄さんは、ひじき漁師のほか、公に近い役割である集落支援員を軸とし、お試し暮らし住宅の管理運営、空き家・空き地の維持管理など十数種類の事業を並行的に進め、「半官半民」の人材として働いている。また、地方移住したい人や地域で事業を営む人がオンラインで相談できる「田舎チャレンジャーラボ」を運営するなど、ウェブを活用した事業も収入の柱のうちの1つだそうだ。

「これから可能性を探っていきたいのが畑と養鶏です。ひじきは主に島外向けの販売となっていますが、野菜や卵は地域内の流通に活用できないかと考えています」

 移住して3年。現場で汗をかき、過疎地でも生計が成り立つことを証明している栄さん。今後は、後進の迎え入れと育成に力を入れていきたいと話す。

「島暮らしは大変なイメージでしたが、地域の人はみな生き生きと暮らしていて、コミュニティもしっかりしています。その一員になれたことがうれしい」と栄さんは笑顔を見せる。やわらかな眼差しは、地域の豊かな可能性を見据えている。

栄大吾

飼い始めたニワトリ。畑もニワトリも、仕事でもあり楽しみでもある。「生活=趣味ですね」。

周防大島

畑での収穫も増え、野菜を沖家室ひじきとセットでネット販売もしている。

栄大吾

栄さんの趣味でもある釣り。ちょっと船で遠出するだけで大きなハマチが。

沖家室

沖家室の海。こんなに美しい海が、職場から徒歩30秒。

 

栄さんから起業アドバイス

栄大吾

デメリットを考慮し、備えや逃げ道も用意
島への移住も起業も、しっかりと将来の展望を固めてから踏み切るほうがいいと思います。いいところばかりを見て「なんとかなる」と思うのではなく、個人事業主のデメリットや島暮らしのデメリットを考慮してください。また、いざとなったときの備えや戻れる逃げ道を用意しておくことも大切です。家族を守れるのは自分だけなので。

沖家室ひじき
山口県大島郡周防大島町沖家室島
https://www.hijiki.online
さかえるWEB SITE https://www.sakaeru.online
Facebook/@sakaeruman

 

周防大島町移住支援情報
“瀬戸内のハワイ”周防大島は子育て環境も介護施設も充実

気候も人もあたたかく、“瀬戸内のハワイ”と呼ばれている周防大島町では、移住相談員を配置し、さまざまな相談に対応。お試し暮らし住宅「島暮ら荘」も用意。また、保育料無料、中学卒業までの医療費無料など子育て支援が充実し、大自然のなかで子育てできる。介護施設も充実し、終の住処として移住する人も。島の住民は元気にあふれ、70歳でもまだ現役で活躍している。
周防大島町政策企画課 ☎︎0820-74-1007 https://www.town.suo-oshima.lg.jp/

周防大島

周防大島

瀬戸内海に沈む夕日。この美しい風景を見て暮らせる。

たくさんの人に周防大島を知ってほしいな。ぜひ、一度来てください。

周防大島町PRサポーター「みかキン」と「みかトト」

 

文/水野昌美 写真提供/栄大吾さん

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