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田舎暮らしの本 10月号

9月2日(金)
850円(税込)

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滞在型市民農園・クラインガルテンで超快適&充実の菜園生活【長野市大岡】

掲載:2022年1月号

週末などに滞在して菜園が楽しめる「クラインガルテン」。顔見知りになった利用者同士の交流や、心ゆくまで自分の好きなことを追求できる時間など、収穫以上の魅力が詰まっている。長野県長野市にある「中ノ在家(なかのざいけ)クラインガルテン」を訪ねた。

クラインガルテン

右から、川嵜明子(かわさきあきこ)さん、名古屋市の上森倭子(うわもりしずこ)さん、長野市大岡支所の藤井健二さん。それぞれの家に戻る前のひととき、畑を前におしゃべりを楽しむ。

長野市

長野県長野市大岡
長野市の南西部、聖山(標高1447m)の北麓に広がる人口約1000人の地区。まちの中心部から見える北アルプスは圧巻。水資源が豊富で、日本の棚田百選に選出された棚田が3カ所ある。東京から関越自動車道・上信越自動車道または中央自動車道・長野自動車道経由で約3時間30分。

道祖神

大岡の顔ともいえる「芦ノ尻道祖神」。疫病退散、縁結びの神様として祀られており、長野冬季オリンピック開会式にも出演した。

 

開設時から利用して25年目。愛すべき癒やしの農園

クラインガルテン

川嵜明子さん/神奈川県厚木市在住。クラインガルテンが開設された1997年より利用をスタート。ほかの利用者に誘われて、登山も再開した。「毎日穫らなければならないナスやトマトはつくらないの。いま植わっている野菜は、次回来たときに全部収穫します」と、川嵜さん。

 19世紀のドイツで始まり、日本でも滞在型の市民農園として人気が高まっているクラインガルテン。ガルテナー(利用者)が週末などにガルテンへ通い、農地に隣接する「ラウベ」と呼ばれる小屋に滞在。菜園やガーデニングをしながら田舎暮らしを楽しむ、という制度だ。

 野菜やハーブを育てているため、利用者は必然的に頻繁に通うようになる。そして、顔見知りになった利用者同士の交流が生まれるのも魅力の1つだ。

 長野市の南西部に位置する中山間地域、大岡地区にある「中ノ在家クラインガルテン」も、そんな交流を楽しめるガルテンの1つ。1997年の開設時からじつに25年も利用している神奈川県厚木市の川嵜明子さん(79歳)を訪ねたときも、名古屋市から通っている上森倭子さんと、畑じまいの話で盛り上がっている最中だった。

 「大岡の隣の信州新町(しんしゅうしんまち)で陶芸をやっている知人がいて、お手伝いのために夫婦で通っていたとき、クラインガルテンができたって教えてもらって、ここを拠点にしようと思って申し込んだのが始まりです」

 それまでは野菜を育てたことなどなったという川嵜さん。ほかのガルテナーや散歩の途中に知り合った地元の人に教えてもらったり、本を読んで勉強しながら、畑を楽しんでいる。

 「友人と一緒に来るときは車に乗せてもらうけど、普段は電車とバスで通っているの。いまは月に2回来て、1週間から10日は滞在しているから、月の半分はこっちにいるわね」

 なんでもないことのようにサラリと話すが、神奈川県から電車で大岡地区へアクセスするのは容易なことではない。所要時間は6〜7時間。しかも、気が向いたときには鈍行列車や青春18きっぷを使うこともあったという。

 「ここの空気が好きなの。神奈川で煮詰まることがあったときには、日帰りで空気を吸うためだけにここに来たことも。この場所があることが、私の癒やしなんです」

 川嵜さんは、自分だけではなく、2組の友人と共同でガルテンを借りている。

 「1人で所有するのではなく、みんなで分かち合いたいといつも考えています。ここでは地元の方に野菜をいただくこともあるし、つくったものを差し上げることもあり、お金を介さずにモノが回るんです。そういう、人やモノが循環してゆくところが、ここのいいところだと思います」

クラインガルテン

ドイツから取り寄せた楽器ライアー。優しい音色がラウベを満たす。「これも持ってくるから、荷物が重くなっちゃった(笑)」。

クラインガルテン

ガルテンは3グループで借りている。利用したメンバーが写真付きで残した記録。「25 年もやっていると、いろんな思い出がありますよ」。

10年ほど登山から遠ざかっていた川嵜さんだが、隣の区画の知人に誘われて、登山を再開。最近は黒姫山にも登った。(写真提供/神田聖史さん)

【川嵜さんの滞在スタイル】

●自宅からの交通手段と所要時間
八王子駅経由で特急あずさと篠ノ井線を使い、聖高原駅へ。麻績村村営バスと、予約に応じて運行する市営バスの大岡線「ハッピー号」を乗り継ぐ。所要は6~7時間ほど。

●利用頻度
月に2回、1回につき1週間から10日ほど滞在する。

●栽培している野菜
ジャガイモ、キャベツ、ハクサイ、トウガラシ、ダイコン、カリフラワー、ルッコラ、ショウガ、コンニャク芋、アスパラガス、菜の花、タマネギ、シソ、ピーマンなど

●月にかかる費用
・交通費(月2回往復)… 約2万3000円(ジパング倶楽部の割引あり)
・電気・水道・ガス(カセットコンロ)代…約5000円
・ほかにし尿処理代

 

恵まれ過ぎた都会を離れ、不便さを楽しむ暮らし

クラインガルテン

山中みちさん/東京都大田区在住。先にクラインガルテンを始めた兄に誘われ、2020年より利用開始。収穫した野菜を人にあげるのが好き。「畑をやっていると、頭も冴えるし、足腰も元気になるの」と、山中さん。東京でもパセリなどをつくっているが、こちらのほうが香りが力強いという。

 東京都大田区の山中みちさん(68歳)は、1年早くガルテナーとなった兄に誘われて、2020年から利用を始めた。

 「2年目なので素人もいいところ(笑)。春に植えたキャベツはおいしかったのに、秋のは結球しないとか、ビーツを植えたらシカに全部食べられちゃったとか、いろんなことを勉強中です」

 東京では夫と暮らしているが、基本的にクラインガルテンはひとりで楽しんでいるという。

 「お互いにそれぞれ好きなことがあるからいいのよ。ほかの利用者さんたちも、それぞれがご自分の時間を楽しんでいて、心地よい感じの交流があるの」

 恵まれ過ぎている都会の生活に慣れてしまうと、小さな幸せを見逃しがちになる。けれど山中さんは、ガルテンに滞在中、「空気を吸うだけで満足」と感じることもあるという。

 「Wi -Fiはないし、テレビも入らない。近くにコンビニやスーパーもないけれど、朝焼けや晴れた日のアルプスの眺望は、そんなことをいっぺんに覆す最高のぜいたくなの」

 畑を耕し、収穫に喜び、アルプスの景観に息をのみ、知人との会話を楽しむ。中山間地域の小さなクラインガルテンには、田舎の幸せな生活が凝縮されている。

クラインガルテン

シカからビーツを守るために寒冷紗をかけたり、虫に食べられないようにハーブやコンパニオンプランツを植えるなどの工夫も。

クラインガルテン

孫たちが遊びに来て、収穫時期を少し逃したズッキーニの大きさにびっくり! 「畑よりも、虫捕りのほうが楽しいみたい(笑)」。(写真提供/山中さん)

クラインガルテン

窓際に板でテーブルをつくり、バーコーナーに。夜はここでワインを飲むのがお気に入りの時間。

気仙沼にアトリエのある、梅村マルティナさんの毛糸で編んだ靴下。編み物は、手仕事が好きな山中さんの滞在中の楽しみの1つだ。

【山中さんの滞在スタイル】

●自宅からの交通手段と所要時間
自家用車で、関越自動車道と上信越自動車道経由で約4時間30分。

●利用頻度
月に2回程度。冬は基本的に通わず、春から秋まで利用する。

●栽培している野菜
タマネギ、ニンニク、ジャガイモ、ピーマン、インゲン、モロヘイヤ、オクラ、キャベツ、ビーツ、アーティチョーク、ルバーブ、ホウレンソウ、シュンギク、レタス、ハクサイ、ブロッコリー、ダイコンなど。

●月にかかる費用
・交通費(1往復)… 約1万4500円
・電気・ガス代… 約4000円
・水道代…2カ月で約2500円
・し尿処理代…1年で約6100円

 

【長野県長野市】大岡中ノ在家クラインガルテン

北アルプスが見える山間のクラインガルテン

クラインガルテン

長野市南西部にある大岡地区の、標高約900mの高原に位置する。北アルプスを望む立地が自慢。露天風呂がある日帰り施設、大岡温泉へ車で約1分。菜園のみの利用も可能(年額1万5700円)。問い合わせは随時受け付けている。

●区画年間使用料金/20万9500円
●初期費用/0円
●菜園面積/200㎡
●ラウベ施設床面積/38㎡
●募集数/問い合わせ
●募集時期/11月

●所在地/長野県長野市大岡中牧683-1
●区画数/滞在型12区画、菜園のみ11区画
●利用期間/通年
●更新/3年
●交通アクセス/長野自動車道麻績ICより車で約20分
●備考/休憩に使える共同施設が1棟あり、耕運機や刈り払い機を無料で利用可能(燃料は個人負担)。
●問い合わせ先/長野市大岡支所 ☎︎026-266-2121
https://www.city.nagano.nagano.jp/soshiki/oooka/

景観も空気もすべてが素晴らしい大岡で、スローライフをお楽しみください!(大岡支所 藤井健二さん)

クラインガルテン

耕運機や刈り払い機など、高価な機械類は共同のものを借りることができる。燃料を満タンで返却するだけで、利用料は無料だ。

クラインガルテン

クラインガルテンの中央にある休憩所。農作業の途中に、風に吹かれながら一休みすることができる。

クラインガルテン

クラインガルテンのすぐ上には「山村留学 大岡ひじり学園」がある。収穫祭にはクラインガルテンにも招待状が届くので、学生たちとの交流も楽しめる。(写真提供/大岡ひじり学園)

車で約1分のところにある大岡温泉。ラウベにはシャワーしかないので、毎日こちらで入浴するガルテナーも多い。

車で約18分のところにある道の駅「長野市大岡特産センター」。頻繁に収穫しなければならないトマトやキュウリなどはあえて栽培せず、買う人が多い。

 

文/はっさく堂 写真/村松弘敏

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