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田舎暮らしの本 5月号

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田舎暮らしの本 5月号

3月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

瀬戸内の温暖で便利な島暮らし。空き家バンクで購入した家をDIYで改修【広島県江田島市】

掲載:2022年3月号

広島市・呉市といった都市部と船や橋で結ばれ、都市機能もほどよく整っている江田島市。瀬戸内海と緑豊かな山々が彩るこのまちへ移住したのは、災害ボランティアに携わってきた夫妻。穏やかな気候と人に恵まれ、DIY生活をしながら里山保全にも取り組んでいる。

家は斜面に立ち、1階が住居、坂の下の地下がガレージになっている。「道路が狭いのが難点です(笑)」と岡本さん。

大きな窓から望む江田島湾は絵画のよう。この物件を気に入った理由の1つだ。

牡蠣の産地として名高い江田島市は、江田島や能美島などで構成され、広島市や呉市から船で10~40分。本土と橋で接続し、広島市から車で1時間余り。釣りや内湾でのSUP、サイクリングなど、アウトドアの楽しみが豊富。

 

海を見下ろす高台の家で、理想の空間づくりに励む

 周りを島が囲む内湾(ないわん)の穏やかな環境を生かし、牡蠣の養殖が盛んな江田島湾。牡蠣筏(かきいかだ)が浮かぶのどかな風景と、歴史的建造物の旧海軍兵学校(海上自衛隊)を望む斜面に、鉄骨造の広い地下ガレージを併設した木造の平屋がたたずむ。

「室内がとてもきれいに保たれていたことと、トイレが水洗だったこと、そしてこの美しい海の眺めにひかれました」

 そう話すのは、大阪府出身の岡本良太(おかもとりょうた)さん(54歳)。早期退職して呉市へ移住し、1年ほど里山再生のNPO法人で活動したのち、呉市出身の宏美(ひろみ)さん(39歳)と結婚。将来、カフェやゲストハウスを開くことも見据え、空き家バンクでこの家を見つけて購入し、2021年8月に移住した。

 改修は基本的にDIY。家の下に広がる約100坪の空地も自分で開墾し、自給自足的に暮らすための菜園と、駐車場を兼ねた趣味のラジコンのサーキットとして整備する計画だ。

「耕うん機、チェーンソー、草刈り機、旋盤などは、不用品を頂いて修理して活用していますし、発電機も廃品を修理して使う予定。今は本格的なDIYを始めるための道具を準備している段階です。とにかく、お金がないもんですから(笑)」

 もともと災害ボランティアとして活躍してきた岡本さんは、その経験や知識を今後の活動に還元していくという。併せて、災害や獣害防止につながる里山再生の取り組みを続けていくため、放置林の竹材を使った竹炭工房で働いている。

 一方、宏美さんは、お菓子づくりやピザづくりの趣味を生かし、広島市内のカフェに勤務。すぐ近くの港から高速艇が出ているため不自由はない。

 このまちの住み心地について、岡本さんはこう話す。

「まず印象的なのが暖かいこと。冬に広島市内で雪が降っていてもこちらは降らず、天気がよければ作業をしていると汗をかくぐらい。何より、近所の皆さんが優しい。使いきれないほど野菜や魚を分けてくださったり、ピザを焼いてお裾分けしたら、それ以上に豪華な料理をつくって持ってきてくれたり、本当にお世話になっています」

 今はまだ日々の仕事や活動に追われ、島内巡りを楽しむ余裕はないという2人だが、心温まる日常の喜びは大きい。

海風が心地よい自宅のテラスにて岡本さん。「いずれは夫婦でカフェやゲストハウスを開きたいと思っています」。

築約30年の物件を購入。全体に状態はよかったが、傷みのある収納内部や壁などをDIYで補修中。

伐採した竹を活用して棚づくり。ほかにも竹製のドーム型倉庫を建てる予定。

地階部分にあたるガレージ奥には居室が2室。今後DIYで内装を整え、ゲストルームなどとしての活用を考えている。

ガレージ内に山積みされたお宝の山。チェーンソー、草刈り機、発電機など、いずれも壊れたものや不用品をもらってきて修理して使う。

家のすぐ下にある空地を開墾中。耕うん機は故障品を譲ってもらって修理した。

アルバイトで通う竹炭工房では、竹の処理から炭焼きまで一連の作業を担う。

完成した竹炭製品。放置林化した竹の活用は、岡本さんが目指す里山の再生につながる。

工房では竹炭づくりの余熱を活用し、江田島の温泉水を使った塩づくりも。

近所の農道へ上がるとさらに爽快な風景が広がる。対岸に旧海軍兵学校を望む。

徒歩約10分の高田港から広島市の宇品(うじな)へ高速艇で20分余り。

 

文・写真/笹木博幸

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