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田舎暮らしの本 10月号

9月2日(金)
850円(税込)

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【コロナ移住】ライブ産業が機能停止! オンラインスクールに活路を開いた作曲家【栃木県小山市】

小山市

23歳で作曲家としてデビューした森谷貴晴さんは、東京都町田市出身。移住した栃木県小山市は町田と雰囲気が似ているという。

 

◎孤独な時間で見直された「地方で生活するメリット」

 コロナ禍は、田舎暮らしの長所が再認識されるきっかけとなった。ソーシャルディスタンスの徹底が叫ばれたことで、混雑する都会の生活が敬遠され、感染者数が少ない地方は魅力的に映った。特に地元を離れ、都市部で1人暮らしをしていた人にとって、家族や友人に会うこともできない孤独な時間を強いられたことは、人生を見つめ直すきっかけになっただろう。

 飲食業や生活娯楽関連サービスなど、大きく打撃を受けた産業に従事していた人は、収入が激減したり失業するケースも相次いだ。新しい仕事を探すとともに、新天地での生活を始めたケースも少なくない。 

 2021年はついに東京23区の人口が転出超過となった。しかし約半数は埼玉・千葉・神奈川の近隣3県への転出であり、東京都単位、あるいは3県を含めた首都圏のトータルでは、引き続き転入超過状態だ。都会から離れられるようになった要因と、それでも離れられない部分を併せ持つ「コロナ移住」の理想と現実を探ってみた。

【栃木県小山市(おやまし)】栃木県南部に位置する、人口約17万人の県下第2の都市。国道4号と50号が交差する交通の要衝で、小山駅には新幹線も停車。東京駅まで東北新幹線で約40分。

森谷貴晴

森谷貴晴(もりやたかはる)さん●31歳

作曲家・編曲家としてアニメソングやテレビ番組の音楽を数多く手がけ、サウンドエンジニアとしても活躍。現在はオンラインの音楽レッスンを行う「ネクストリードミュージックスクール」の代表を務める。

森谷貴晴

コロナ禍で最初にダメージを受けた業種が、劇場やホールが使用できなくなった文化芸術関係だった。ライブハウスやスタジオでの仕事が途絶えた森谷さんはオンラインスクール事業を拡充したことで、小山市への移住につながった。

森谷貴晴

作曲や配信など、多様な業務を自宅の作業部屋でこなす森谷さんだが、機材は意外にシンプル。音楽業界も技術の進歩で、パソコンで行える作業の範囲が広がっている。

 

◎音楽業界では収入が完全に断たれた人も

 新型コロナウイルスの影響を最も受けた業種は、生活娯楽関連サービスとされる。宿泊業や観光業、冠婚葬祭業やフィットネスクラブなどは、経営面で深刻なダメージを負った。2020年4月に出された最初の緊急事態宣言では、演劇や音楽、スポーツなど、あらゆるイベントが中止となった。

 一部は後にオンライン配信に活路を見いだすこととなったが、携わる人たちは、収入が減少したことで将来的な活動に不安を感じたことは想像に難くない。森谷貴晴さんも、都内のレコーディングスタジオやライブハウスでの仕事がぱったりと途絶えてしまったという。

「最初の緊急事態宣言で、ライブ業界は壊滅的な打撃を受けました。仲間の多くが失職し、たとえ元のようにライブを開ける状況になったとしても、関連業者の多くが廃業してしまったため、戻しようがありません」

 

◎オンラインスクールの運営に軸足を移した

 ただ、森谷さんはもう1つ、収益の柱を持っていた。オンラインで指導する音楽スクールを2017年に開講。自ら講師としてギターやピアノを教えるほか、音楽事務所に所属していたときの仲間が協力。コロナ禍で、この事業にさらに注力した。

「収入をカバーするだけでなく、習いに行けない音楽ファンと、仕事ができず困っているミュージシャンをつなぐ役割を担うことができました。ただ、オンラインスクールに軸足を移すと、都内に住む必要性がなくなってしまったんです。そこで20年12月に小山に部屋を借り、翌年3月に完全に移住しました」

小山市

自宅での作業が行き詰まったときの気分転換で利用する「ショコラテラスKokage」は、カフェスペースを併設。運営する和菓子店「乙女屋」とは、ラジオでもコラボしている。http://otomeya.co.jp

 

◎東京へも栃木の各地へも出やすい絶好の立地

 現在は小山市内の2LDKの賃貸住宅に住み、1室を仕事専用の部屋として確保している。家賃は月4万5000円と、ランニングコストは大幅に減った。

「移住先に小山を選んだのは、まず東京に出やすいこと。新幹線を使わなくても、新宿まで電車で1時間20分ほどなので、もしコロナ禍のあとにスタジオやライブハウスの仕事があっても、現場まで通うことが可能です。車は購入していませんが、コンビニやスーパー、薬局などが近隣にあり、不便は感じません」

 森谷さんのオンラインスクールでは、音楽以外の事業にも進出予定だ。現在、準備を進めているのが、外国人に日本語を教える語学プログラム。コロナ禍が終了したあと、再びインバウンドが来るときに備えている。

「栃木には世界遺産である日光の社寺や、鬼怒川や那須などの温泉、テーマパークなど観光資源がたくさんあります。栃木県内の各所へ足を運びやすいところも、小山を選んだ理由の1つです」

森谷貴晴

小山駅前のコワーキングスペース「SEKEN」もたびたび利用。IT系の業務を行っている人や、移住者との出会いの場にもなっている。

小山市

「SEKEN」は元洋服店だった建物を活用。JR小山駅西口から徒歩3分。コワーキングスペースのほか、シェアオフィスとしての利用も可能だ。

森谷貴晴

「SEKEN」を運営する一般社団法人カゼトツチの古河大輔さん(右)。小山への移住を検討する人のオンライン相談や案内、移住者同士の交流会などの業務を市から委託されている。

 

◎身を投じることで小山に溶け込んでいきたい

 完全移住からまだ1年だが、森谷さんはすでに地域とのつながりを築きつつある。パーソナリティを務める小山市のコミュニティFM局「おーラジ」では、スクールの生徒がつくった音楽を紹介する番組を担当。コワーキングスペースで生まれたつながりを契機に、移住者向けのイベントにも参加している。

「地方都市には閉鎖的な側面がつきもの。栃木の観光資源を活用する事業を行うなら、まず身を投じることが重要だと考えました。コロナ禍が完全に収まったときには、もっと地元の人たちに溶け込んでいきたいと思います」

森谷貴晴

「おーラジ」で森谷さんと鈴木陽子さんがパーソナリティを務める『君にフォーカス』は、毎月第2土曜の17時から放送。ホームページや公式アプリで、全国どこからでも聴取可能だ。http://o-radi775.jp

森谷さんが代表を務める「ネクストリードミュージックスクール」には、楽器のほかにもボーカルやDTM、さらに音楽理論や話し方など、多彩なプログラムが用意されている。

 

オンラインで小山市への移住相談を実施中!

小山市ではオンラインによる移住相談を受け付けている。また、移住を検討している人が見てみたい場所を自由にオーダーできる市内案内も実施中だ(緊急事態宣言発令中等は受け付け停止)。

(問い合わせ先)シティプロモーション課
☎0285-22-9376

https://www.city.oyama.tochigi.jp/site/iju/211980.html

 

文/渡瀬基樹 写真/兵藤冬樹

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