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田舎暮らしの本 5月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 5月号

3月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

菜園と林のある広い屋敷へ移住!懐かしい景観の里山暮らしを家族で満喫【栃木県茂木町】

掲載:2022年4月号

里山の景観が懐かしい栃木県茂木町。小高い山々の麓には小規模な農地が多く、空き家バンクを探せば、家庭菜園を楽しむのにちょうどいい物件が見つかる。前に菜園、後ろに林を持つ広い屋敷に移り住み、菜園を含めた里山の暮らしを満喫する境野さん家族を訪ねた。

住居の前の畑。冬は何もないけれど、庭先で刈り取ったローズマリー、お隣から頂いたハクサイと干し柿で、豊かな里山暮らし。

栃木県の南東部に位置する人口約1万1500人の町。里山の自然と那珂川などの清流に恵まれる。常磐自動車道水戸ICより約40分、東北自動車道宇都宮ICより約50分。JR水戸線下館駅より真岡鐵道茂木駅まで約1時間13分。

転職先の空き家バンクで裏山のある家を見つけた

 境野圭吾(さかいのけいご)さん(31歳)、かれんさん(31歳)、照春(てるはる)さん(8歳)、継春(つぐはる)さん(7歳)家族が茂木町に移り住んだのは2019年3月。野外でのフィールドワークが大好きな圭吾さんは移住前、千葉県流山市(ながれやまし)から都内の出版社に通勤し、生物の図鑑の編集に携わっていた。大きな企画を仕上げたのを機に、自然に囲まれて仕事がしたいと転職。勤務先が茂木町内に決まった。

 家探しには茂木町の空き家バンクを利用。かれんさんは言う。

「3月下旬に職場が決まり、それから家を探して月末に引っ越しました。町の空き家情報バンクにたまたま紹介されていたのがこの家。見に来て即決です。夫は裏山のある家に住みたいと以前から話していたんですよ」

 集落の高台に立つ日本家屋は梁や瓦も豪壮なつくり。キッチンなどのリフォームと畳替えの費用は、町の空き家改修補助金と家賃助成分でまかなえた。

 見晴らしのよい庭のすぐ下は畑、裏山の竹林では春になるとタケノコがたくさん採れる。

「どこまでがこの家の山なのか、敷地面積もよくわかりません」

5月。畝にビニールマルチを張って、夏野菜の苗を定植。

夏にたくさん穫れるミニトマト、ブルーベリー、シシトウ、トウガラシ。

ジャムに加工して一年中おいしくいただくブルーベリー。

ローズマリーはコーヒーフィルターに入れ、口をミシンで縫い留めて芳香剤に。

アスパラガスがニョキッ!おばあちゃんが育てた畑

 家賃は月6万円。庭、畑、裏山を含めた屋敷全体を管理する条件付き。東京農業大学で「人と動植物のかかわり」について学んだ夫妻は、鎌や鍬の使い方など、農作業の基本は経験していたが、菜園はほぼ初心者。かれんさんは言う。

「草刈りは2人とも、それぞれできるときにします。私には大学の実習のよう。楽しんでます」

 畑はお隣のご主人が最初にトラクターで耕してくれた。

「ご近所の皆さんには本当によくしていただいています」

 以前は家主のおばあちゃんが野菜をつくっていた畑。境野さんはその一角に畝を立てて、夏の果菜類を中心に育てている。

「春のある日、畝の周りの草を刈ってふと見ると、アスパラガスが生えていたんです。おばあちゃんが植えていたのでしょう。多年草なので、それから毎年30本以上穫っています」

 青シソ、赤シソや、カモミールも自然生え。こぼれ種から毎年育つ。ブルーベリーも、もともと植えてあったもの。アヤメ、ショウブ、シャクヤク、スイレン......。季節の花も自然に咲く。

 境野さん家族は、花が好きなおばあちゃんに育まれた屋敷や菜園や裏山、つまり里山の景観を、野菜を育てて草を刈り、ここに暮らして受け継いでいる。

朝の出勤前。縁側の日だまりでくつろぐ。職場までは車で5分ほど。

境野さんファミリー。前右から時計回りに、継春さん、照春さん、ネコのきなり、圭吾さん、かれんさん。

間取りは6DK。居間兼子ども部屋は2間続きで広々と使う。

敷地内には氏神様が祀られている。 草を刈り、登りやすいように階段をつくった。

裏山から屋敷全体を見下ろす。右側に赤い屋根の倉庫、瓦屋根の母屋。 左側に赤い屋根の小屋 、その向こうが菜園。

春いちばんで庭に自然に生えてくるフキノトウ。

お隣に住む薄羽ミサ子さんに、 自家製の干し芋と干し柿を頂いた。

ミサ子さんの夫の富雄さんと。8 年前に実家へUターンしたという菜園の名人。

かれんさんの洋裁は9年前から本格化。小物からスーツまで手がける。マスク不足の時期にはインスタグラムで注文を受け、2カ月で400枚をつくった。

夏のお手製スイカハンカチ。近隣の委託販売先でも好評だった。

境野さんの菜園のこだわり

春の草を見るのも楽しみ

 菜園はできる範囲で続けたいのでこだわりはないですね。面倒だから農薬は使いません。子どもたちは畝で砂場のように遊びます。ゴールデンウイークまでは遅霜の心配があるので、連休明けに好きな夏野菜の苗を買ってきて植えています。お隣から頂くキャベツやハクサイなどは、わが家では育てていません。小さくても自分たちで育てた野菜を収獲するのは楽しいですし、春になれば畑にはツクシやホトケノザなども生えてきます。そういう野の草を見るのも好きなんです。

5月下旬の菜園。周りの草はそろそろ刈りどき。

境野さんに聞く!畑ではどんな野菜が育ちやすくておいしいの?

 山のように穫れるのはミニトマトです。昨年は苗を5本植えて3本は途中で消えて、残ったのは2本。けれども前年のこぼれ種から生えた野良トマトが育ちました。芽欠きなどのお世話は最初こそしましたが、後半になると適当になって。秋には畝を埋め尽くしたミニトマトは、わが家の畑の王者です。

茂木町移住担当者に聞く!菜園の楽しみ方

落ち葉は堆肥の原料に

 町の年平均気温は13°Cほど。ひととおりの野菜が育ちます。冬の最も寒い朝は、-10°Cほど。野菜や果樹は寒暖差で甘味が増しておいしいです。里山の落ち葉などを町の施設で堆肥化しており、道の駅などでも販売する「美土里たい肥」は農家や菜園家から好評。特産のイチゴ栽培にも使われます。土づくりにどうぞ。

茂木町の名産品の1つ、完熟とちおとめ。

ライター・新田の菜園チェック!

出合えたのがラッキー!理想的な家庭菜園用地

 住居の目の前、南東向きの斜面に開かれた農地は日当たりと水はけがよく、長年菜園として使われた土は肥え過ぎずやせ過ぎず。理想的な環境です。全体の面積は500㎡ほど。日々収穫し、週末はじっくり菜園を楽しむなら、フル活用で2家族分の野菜と穀物を年中途切れず自給できるでしょう。どっぷり菜園生活ではなく、ほどほどに続けるのなら、境野さんのように畑の中で野菜の育ちのよい一角を栽培にあて、ほかのエリアは刈り払い機で草刈りだけします。将来菜園を広げたいなら、未利用地にクローバーや麦類などの緑肥作物を蒔くのも手。ほかの草を抑えて草刈りの労力が減り、土づくりにも役立ちます。

いつでもすぐ行ける屋敷の前の畑。周囲の畑から独立している点でも、気軽な家庭菜園向き。

大豆は比較的手間がかからず、広い畑で育てやすい。種蒔きの適期が地域ごとに異なるので要注意。

アスパラガスを見つけたよ!家の周りであれこれ穫れる。里山の暮らしは子どもたちも野遊びし放題!

にった・ほたか●竹内孝功さんの連載など長年にわたり菜園関連記事を担当。茨城県内の茅葺き民家に移住して24年。昨年はイノシシ避けの電柵を設置して庭先菜園を再開。

 

文・写真/新田穂高 写真提供/境野圭吾さん、茂木町

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