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田舎暮らしの本 6月号

4月30日(土)
850円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

人口も出生率もUP!「こどもを核としたまちづくり」で住みたいまち、戻りたいまちへ【兵庫県明石市】

掲載:2022年4月号

東経135度子午線が通る「日本標準時のまち」、明石城のある「歴史のまち」、上質なタイやタコで名高い「海のまち」と、多様な魅力を持つ明石市。現市長の就任後は「子育てのまち」づくりに全力を注ぎ、2020年の国勢調査では、人口が初の30万人を突破。人口増加率は62中核市で1位となった。

明石城跡周辺を整備した県立の明石公園。大きな広場で走り回ったり、お弁当を食べたりしてくつろげる。

兵庫県明石市 あかしし
神戸市の西側に隣接する瀬戸内海沿いの中核市。魚介類の宝庫である明石海峡を挟んで淡路島を望む。明石駅へはJR神戸線(山陽本線)新快速で大阪駅から約40分、三ノ宮駅から約15分。東京駅から西明石駅へ新幹線で約3時間。

 

子育てにやさしいまちで海が見える暮らしを実現

内藤聡太(そうた)さん(30歳)、瑠花(るか)さん(30歳)、優吏(ゆうり)くん(1歳)
聡太さんは兵庫県加西市出身、瑠花さんは大阪府出身。結婚した2018年に明石市へ移住して賃貸アパートに入居。長男妊娠を機に、あこがれていた海辺のマンションを購入。写真の大蔵(おおくら)海岸は内藤さんファミリーがよく訪れる場所。明石海峡に面し、淡路島、明石海峡大橋の絶景を望む。明石海峡大橋は、神戸市垂水区と淡路市岩屋とを結ぶ世界最長の吊り橋で全長3911m。

 

 瀬戸内海が目の前に広がり、雄大な明石海峡大橋を間近に望むロケーション。あこがれていた海が見える暮らしをかなえたのは、内藤聡太さん・瑠花さん夫妻。当初は都市部へのアクセスのよさと手ごろな家賃相場にひかれ、明石市へ移住して賃貸生活をしていたが、定住を決意して今のマンションを購入した。

 「ずっと住み続けたい」という思いが強くなった理由を、瑠花さんはこう説明する。

 「きれいな海があり、利便性に優れていることに加えて、妊娠してからは子育て施策が充実しているなと実感するようになりました。外出支援として妊娠中から使える5000円分のタクシーチケットのプレゼントや、0歳児家庭向けに始まった『おむつ定期便』はその一例です」

 面積当たりの都市公園数は兵庫県内1位で、優吏くんを連れて遊びに行ける憩いのスポットも多い。海辺でのびのびと走り回れるお気に入りの大蔵海岸公園のほか、桜の名所の明石公園は暑い夏も木陰で気持ちよく過ごせる。そして雨の日や寒い冬には、明石駅前の「あかしこども広場」内にある親子交流スペース「ハレハレ」や子育て支援センターへ。

 「室内大型遊具が充実した遊び場が市民に無料で開放され、ボランティアの方によるイベントもあって、多ければ週に3〜4回訪れることも」
 
 ほかにも、ブックスタート&ブックセカンドとして、4カ月児健診時と3歳6カ月児健診時に絵本のプレゼントがあったり、ベビープラネタリウムを実施している市立天文科学館へ子どもは無料で入館できたり、子育てを応援する施策は多彩。

 「子どもの医療費や給食の無料化を含めて、家計の負担を抑えるサポートがしっかりしているのはありがたいですね」

 と、瑠花さん。安くておいしい魚介類など食の環境にも恵まれ、親子3人で安心してゆったりと暮らせているという。

カラフルな遊具がある大蔵海岸公園は優吏くんのお気に入り。目の前に砂浜が広がり、夏には海水浴場も。

内藤さん夫妻は明石海峡を望むマンションを購入。「あこがれていた海の近くでの生活がかないました!」と聡太さん。

地元で「うぉんたな」とも呼ばれる「魚の棚」商店街には、瀬戸内海の新鮮な魚介類が並ぶ。

明石駅南は再開発で活気を取り戻した。「あかしこども広場」や商業施設が入った「パピオスあかし」はその象徴。

 

すべての子どもに対してサービスの無償化を推進

 一時は人口減少の傾向にあった明石市だが、昨年まで9年連続で人口が増加している。2020年までの5年間では、人口増加率3.55%と全国の中核市でトップとなり、人口30万人を初めて超えた。人口のV字回復を支えるのが、内藤さんファミリーのような20〜30代の子育て世代の移住・定住者だ。単に市外から移り住むだけでなく、出生率も11年の1.5から18年には1.7まで高まり、市内で2人目や3人目を出産している傾向がうかがえる。
 
 子育て世代に選ばれる背景として、大阪や神戸への通勤の利便性、阪神エリアと比べて割安な家賃相場、美しい海のある自然環境なども挙げられるが、近年次々と打ち出してきた子育て支援の充実ぶりは見逃せない。

 「現在の泉 房穂(いずみふさほ)市長が就任した11年から『こどもを核としたまちづくり』というビジョンを示し、子ども最優先の施策を整えてきました。代表的な例が『5つの無料化』です」
 
 そう話すのは、シティセールス課の白江隆太さん。具体的には、第2子以降の保育料、高校生までの医療費、中学生の給食費、市営の遊び場や学びの場を無料化。20年秋には5つ目の無料化として、市民の声を反映して「おむつ定期便」を開始した。満1歳まで毎月約3000円相当の赤ちゃん用品を届けると同時に、0歳児の見守り訪問を行っている。
 
 これらの施策はほかのまちでも実施されているが、明石市では親の所得制限や一部負担などの条件を設けていない。現金給付ではなく子育ての基本となるサービスを無料化することと、すべての子どもに等しく届けることが大きな特徴だ。

2016年から第2子以降の保育料完全無料化を実施。兄弟・姉妹の年齢制限は設けていない。

市立中学校でも学校給食を開始。中学校の給食費は2020年春から無料化した。

明石駅前の「あかし市民図書館」。このほか車2台体制での移動図書館など、「本のまち」を掲げて誰もが本に親しめる環境づくりに取り組む。

【明石市】スゴイ! 子育て支援➀
所得制限や自己負担なしで医療・保育・給食費を無料化

 中学生までが対象だった子ども医療費の無料化は、2021年7月から全国の中核市以上のまちとしては初めて高校生(18歳)までに拡充した。薬代や市外の病院の利用も対象になる。さらに、第2子以降の保育料は兄弟・姉妹の年齢にかかわらず無料、中学生の給食費も無料。いずれも親の所得制限や自己負担は一切ない。

 

子育て世代への投資が新たな財源をもたらす

 ハード面では17年春、明石駅前南地区の再開発ビル「パピオスあかし」内に、子育ての総合支援施設「あかしこども広場」が全面オープンした。親子交流スペース「ハレハレ」、「あかし子育て支援センター」、一時保育を行う「にこにこ保育ルーム」、音楽スタジオやダンススタジオを備えた中学・高校生向けの「AKASHIユーススペース」のほか、多様なスペースが1フロアに揃う。「もうすぐパパママ講座」「親子クッキング教室」など、妊娠期から小学生まで幅広い世代が対象の子育て支援講座も実施している。同ビル内には「こども健康センター」や「あかし総合窓口」、市民図書館やクリニックモールなどもあり、ここだけでさまざまな用事を済ませられるのはありがたい。

 これら子育てを中心とする市民サービスの向上は、暮らしの安心感をもたらし、人口増加がにぎわいを創出。まちの活性化で財源が潤い、新たな施策へつなげられるという好循環を生んだ。人口の増加に伴って気になるのが待機児童の問題だが、充分な予算を投じて施設の新・増設や人材確保を進め、解消に努めている。
 

 多くの取り組みの成果について、泉市長は次のように話す。

 「『どんなに子育て支援に力を入れても、高校を卒業したら出ていってしまう』と指摘されますが、それで構いません。京都の大学へ行き、大阪の会社で働いて、神戸でデートを楽しめばいいんです。その代わり、結婚して子どもが生まれたら『やっぱり明石がいい』と3人で帰ってきて、2人目や3人目の子どもを産む。そんなまちづくりを10年余り続けてきた結果、今の明石があるのです」

屋内大型遊具が揃う親子交流スペース「ハレハレ」は、「あかしこども広場」内でも人気のスポット。明石市民は保護者を含めて無料で遊べる。

ファミリープールなどがあり、夏になるとにぎわう明石海浜プール。市内の小学生以下は無料。

明石の歴史と文化を紹介する明石市立文化博物館は、市民以外も中学生以下なら入館無料。

きめ細かな教育を提供するため、少人数学級制を推進。まずは進学の第一歩でつまずかないよう、小学1年生を1クラス30人以下、中学1年生を35人以下に。

無料で利用できる「あかし子育て支援センター」。市内最大規模のプレイルームや、蔵書8000冊以上の「こども図書室」からなり、子育てに関する相談にも応じる。

【明石市】スゴイ! 子育て支援②
公共施設利用料の無料化により親子で気軽に遊び、学べる

 主要な公共施設の利用料を無料化。親子交流スペース「ハレハレ」は市民なら子どもと保護者が無料になるほか、明石海浜プール、市立天文科学館、市立文化博物館は子どもが無料に(対象年齢あり)。

【明石市】スゴイ! 子育て支援③
子ども部門の予算は2倍余り、職員の数も約3倍へと拡充

 子育て支援を充実させるため、しっかりと予算と人材を確保。子ども部門の予算は10年前と比べて2倍以上、一般会計の2割余りを占める規模へと拡充。子ども部門の市の職員も約3倍に増員した。

 

泉房穂 明石市長インタビュー
「まちの好循環は子育て支援から」

いずみ・ふさほ●1963年、明石市生まれ。東京大学教育学部卒業。弁護士、社会福祉士。NHKや民放での勤務、衆議院議員などを経て、2011年から明石市長に就任。市民目線での改革を実行し、現在3期目。
公式サイト https://www.izumifusaho.com/ 
Twitter @izumi_akashi

 

世界や国内の成功事例を明石型にして取り入れる

 私が市長に就任した当時、明石市は人口減少、財政赤字、地方衰退という3つの課題を抱えていました。そこから11年が経った今、人口はV字回復し、財政は県内一健全になり、まちも元気になりました。悪循環から好循環への立て直しは、発想の転換ができれば難しくありません。市民からお預かりした税金に私たちが知恵と汗の付加価値を加えて市民にお返しすれば、魅力的なまちになり、人が集まることで税収が増え、さらによい環境整備につながります。ヨーロッパなどでは当たり前の手法です。ところが、日本ではまず経済成長という時代遅れの発想があり、国民や市民への分配はそのおこぼれ。明石市ではまず市民生活の底上げを最重点化し、思い切って生活支援に予算をシフトしました。

 なかでも「こどもを核としたまちづくり」を掲げるのは、日本が子どもに冷たい政治・行政を続けているから。子どもたちはまちや国の未来です。みんなで子どもを応援すればまちが元気になるという確信があり、市長就任と同時に子育て支援に大きく舵を切りました。その象徴が「5つの無料化」で、親の経済的事情に関係なく、すべての子どもが対象。基本サービスの無料化を徹底し、安易な現金のバラまきは一切しません。

 さまざまな施策について「国内初」とよく評価をいただきますが、ほとんどは各国で実施しているグローバルスタンダードや、ほかの自治体での成功事例を取り入れているだけ。市民の声に耳を傾けてニーズをとらえれば、具体的な制度設計の答えはゼロから考えなくても諸外国などに揃っていますから。すでに実績のある施策を明石市の実情に応じてアレンジするので、失敗するはずがありません。あとは国や県の顔色をうかがわず、自腹を切る覚悟さえあればすぐに実現可能です。

 もう1つのテーマ「やさしい社会を明石市から」の言葉に託したのは、子育てを含めて困ったときに助け合える社会にしたいという思い。

 「明石から」には2つの意味があり、国がやらなくても明石から始めるという覚悟と、その取り組みが明石から全国へ広がり、いずれは国で制度化してほしいとの強い願いが込められています。

 子育て支援以外にも、高齢者や障がい者支援など全国トップクラスの施策を数多く行っていますが、まだまだ道半ば。私は次の方にバトンを渡すまで、必要な制度や条例を整え、明石市が「ええまち」「やさしいまち」であり続けるよう努めていくことが使命だと思っています。

 市民の意識も大きく変わり、寛容さや助け合いの精神が定着してきました。理由の1つはみんなが豊かになったから。例えば安心して子育てできる環境を整えれば、親子で食事や遊びに出かける機会が増え、市外から移住して家を買う人も増えるでしょう。そうすれば飲食店も不動産会社も潤い、まちの活気へとつながります。目指すべきまちづくりのキーワードは「ALL for ALL」。みんなで支え、みんなが対象となり、みんなが助かる仕組み。明石市はそれができることを証明しました。

 

まだある! 【明石市】スゴイ子育て支援

  • 離婚後未払いの養育費を立て替え
  • 児童扶養手当の実質毎月支給
  • 国基準2倍以上の職員を配置した児童相談所を新設
  • こども食堂を全小学校区に開設

2020年秋に始まった「おむつ定期便」は生後3カ月から満1歳まで毎月、赤ちゃん用品をお届け。子育て経験のある配達員が訪問し、家庭の見守りも行う。

 

【明石市】移住支援情報
パンフレットや公式サイトで移住先としての魅力を幅広く発信

 明石市では、市民になることで受けられる幅広い支援やまちの魅力を伝えることで、多くの移住実績へとつなげてきた。そのツールの一例として、多彩な子育て支援や住環境のよさを紹介するパンフレット『笑顔のタネあかし。』を発行し、市内の不動産会社などにも配布。同名のウェブサイトも開設し、移住希望者へのPRを行っている。

問い合わせ/シティセールス課  ☎078-918-5263
『笑顔のタネあかし。』 https://www.city.akashi.lg.jp/shise/koho/citysales

市外からの利用も多い「あかしこども広場」の展示スペースでも市の旬な情報を発信。

シティセールスニュースとして発行している『笑顔のタネあかし。』。

「住みやすいまちづくりが最大の移住支援です!」 シティセールス課 白江隆太さん

 

文・写真/笹木博幸 写真提供/明石市

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