田舎暮らしの本 Web

  • 田舎暮らしの本 公式Facebookはこちら
  • 田舎暮らしの本 メールマガジン 登録はこちらから
  • 田舎暮らしの本 公式Instagramはこちら
  • 田舎暮らしの本 公式X(Twitter)はこちら

田舎暮らしの本 5月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 5月号

3月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

貫地谷しほりさんインタビュー「自分をしっかりと見ることが、人の心を理解することにもつながるだろうと」

掲載:2022年9月号

DREAMS COME TRUEの5つの楽曲の“歌詩”を、「ひよっこ」『余命10年』の岡田惠和総監修のもとで脚本化したオリジナルドラマ『5つの歌詩(うた)』。そのうちの一篇「空を読む」に、貫地谷しほりさんが出演しています。ドラマに描かれた恋愛のこと、ご自身の結婚のこと、じっくりとお話をお聞きしました。

かんじや・しほり●1985年12月12日生まれ、東京都出身。2002年に映画デビュー。07年、NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」で初主演。主な出演作に「なつぞら」「テセウスの船」などのテレビドラマ、『パレード』『くちづけ』『総理の夫』などの映画。映画『サバカン SABAKAN』が8月19日公開。

 

ドリカムの歌詩をドラマ化。女性の切ない心情を描く

 「ドリカムさんの曲は、私が幼いころから母が大好きで。『未来予想図』『決戦は金曜日』と、よく歌っていました。母は歌が上手なんです。私もその影響でやっぱり歌います。『LOVE LOVE LOVE』などのバラードが多いかも。だから今回参加できるのはうれしかったです」

 DREAMS COME TRUEの歌詩を独自に解釈してドラマ化した『5つの歌詩』。貫地谷しほりさんが出演したのは「空を読む」。その歌詩には思い通りにいかない恋に揺れ、気づくと空を見上げてしまう女の子の切ない心情が描かれる。

 「〝月の裏側のように見えないあなたの影を見渡せるロケットがあればいいのに〞という意味の歌詩があって、すてきだな〜って。撮影中も、移動のときに曲を聴いたりしていました」

 そんな彼女がドラマで演じる歩実には、無口でぼやっとした夫がいる。演じるのは三浦貴大。いつもの夜のひととき、タブレットをいじる夫を背中越しに見ながら、心の中で「出会って13年も経つと夫のやりそうなこと、考えそうなことは想像がつく」とか言って、歩実はちびちびお酒を飲んでいる。

 「ピスタチオをぽりぽり食べながらね(笑)。あのシーン、すごく気に入ってるんです。自分のフィルターを通して相手を見て、勝手に諦めているあの感じ。脚本には女性にとって、わかる〜!と思わせるものが詰まっています。ただきれいなだけではなく、かといって汚いところばかりに焦点を当てるのでもない。ごく普通の女性像で、ものすごく面白かったです」

 歩実には、忘れられない恋が。相手は、旅先で知り合ったカメラマン志望の光太。渡辺大知演じる彼との恋は自然な成り行きで始まり、ある悲しい出来事を機に、歩実が「傷ついているフリをして、あなたを傷つけた」。そうして、20代らしい不器用な結末を迎える。

 「いいセリフですよねぇ……。でも、そういうことってありますよね。自分は傷ついているからと相手を避けるような態度になり、結果的に相手を傷つけてしまう。でも20代ではわからないですよね、わかったら偉いですよ」

 そう語る貫地谷さん。真っ白な肌と純な笑顔は年齢を感じさせないクリアな輝きなのに、実年齢なんてずっと昔に通り越したような、どこかどっしりとしたたたずまい。先日あるトーク番組で「女性が怒っているときは、心では泣いていると思ったほうがいい」と発言。その場にいた男性陣が一瞬でひれ伏すように彼女の言葉に聞き入ったことが話題に。この洞察力はいかにして鍛えられたのだろう。

 「自分の中で、そのときどきの決着をつけるようにはしています。それが数年後に、やっぱり違った!と思い直すこともありますけど、そのときに考えられるところまで考える癖はありますね」

 なぜ悲しいのに、怒ってしまうんだろう? それは素直に泣きながら「悲しい」とは言えないから。それを彼には説明せずともわかってほしい。なのに全然わからない様子だから頭にくるのかも――。そんなふうに一つひとつ、考え抜いて結論を出す。それは脚本を読んで役を理解して構築する、女優という仕事と直結するよう。

 「関係あると思いますね。やっぱり自分をしっかりと見ることが、人の心を理解することにもつながるだろうと思うんです」

 このドラマの歩実も、そんなふうにつくり上げたもの。落ち着いた結婚生活が退屈とか停滞という言葉に置き換わりそうな日々のなか、その恋の結末をいまだに消化できていない、かつての恋人と再会する。その先に、あるものは?

 「いいドラマだな〜って。恋愛モノって久々で、結婚してから初めてだったんです。マネージャーさんに〝キスシーンがあるんですけど大丈夫ですか〞と聞かれて。えっ、何がダメなの⁉と言ったんですけど(笑)」

 

 

ヘアメイク/北 一騎 スタイリスト/mick(Koa Hole inc.)

将来どこに住みたい? そんな話ばかりしています

 そんな貫地谷さんだが、ちょうど30歳くらいのころ、大きな壁にぶち当たった。

 「忙し過ぎたせいもあります。仕事が重なったり、プライベートなこともいろいろと。でも小さなことで立ち止まっていたら走れなかったので無視していたんです。それが無視できないくらいになって。すべてが今までとは違う!というのを体験して傷ついてしまったんです」

 そこから貫地谷さんは考え抜く。とにかく傷ついていることを理解し、本当なら向き合いたくはない心の奥底を凝視する。

 「そんなことはしたくないけど、仕方ないですよね。それで1つの仮説を立て、ああ、そうかも……と腑に落ちたらそれでいい。するといつの間にか、ただ次の波に飲まれたのかわかりませんが、気づいたら自分はもうそこにはいませんでした」

 確かにもやもやとした思いを言葉にすると、一歩進めた気になる。さらに自分が先へ進み、振り返って一度言葉にしたその〝仮説〞をもう一度検証し、違う!と思ったら書き直せばいい。なるほど。

 「今思えば、あんなふうに傷ついたのは必要なことだったなと。それまでの自分は傲慢だっただろうし、少しだけ優しくなれたんじゃないかなって」

 変化はたぶん、ゆったりとしたもの。でも「明らかに今は、20代のころよりは考えている」と貫地谷さん。そうした流れのなかに新たな出会いがあり、3年前、結婚に至った。

 「夫は基本的にすごく冷静。もちろんはっちゃける部分もあったりしますけど、落ち着いた人です。私はどちらかというと感情型ですけど、彼の影響を受けて段々とそうじゃない部分が備わってきた気がします」

 客観的に自分を分析しながら淡々と語る姿に、感情型?と思うも、そもそも感情を表現するプロであるのを思い出して恐縮する。

「最近は、将来どこに住みたい?とか、そんな話ばっかりしています。こないだ更新でもないのに引っ越しをしたんです。自分たちにいちばんいいエリアは?というのがわからないから、とりあえずいろいろなところに住んでみたいねって」

 ゆくゆくは都内じゃないところもいい。どんどん夢は広がる。

 「近場だと鎌倉・逗子・葉山、あの辺りは自然も海もあっていいですよね。海が好きなんです。何も考えないで浮かんでいる時間が好きで。だから沖縄もいいなあ。食べることが好きだから北海道もいいなとか(笑)」

 理想の家も妄想中。

 「これは明確にあって、庭が広い家を建てたい。一年中いい匂いのする香木を植えたいし、畑にも興味があるんですよ。庭で穫ったバジルで何かつくりま〜す!なんて格好いい。憧れですね。ぶ〜んって音がするとびびって逃げ出すくらいに虫が怖いし、土いじりも得意じゃないと思うので、まずは水耕栽培から。レタスを育ててみたいです」

 また父親の実家は広島で、子どものころからしばしば訪れた。海に行ったり庭でバーベキューをしたり、大切な光景として今も心に記憶されている。

 「酒蔵がたくさんある西条というところで、水のきれいなエリアなんだと思います。お風呂なども地下水を使っていて、帰るたびにお肌がつるっつるになるんです。夏には夫と行って、2人で酒蔵巡りをしました。どのお酒がいいか試飲をしながらたくさん買って。楽しいですよ。ぜひ行ってみてください」

 お酒は日本酒、焼酎、白ワイン派。つまみはやっぱり魚介類ですか?と聞くと、「魚、好きですね〜」と貫地谷さん。

 「最近は深酒するときはだいたい夫と一緒です(笑)。私、酔っぱらうと〝帰らないオバケ〞になるみたいで。帰らない! まだ飲む!みたいな。そうなったらアウトなので、連れて帰ってくれというふうに伝えてます」

 いい旦那さんですね、と言うと、「いい夫だと思います、本当に」と照れることもなく頷く。

 「母も祖母も料理上手で、私、そっちの才能はちょびっとあるかもしれないです。つくるのが早いかも、ていねいではないですけど」

 そう言って小さく笑うさまには、ドラマで演じた歩実とは違い、充実した生活ぶりが透けるよう。

 「食事に関しては納豆は必需品、小粒かひきわりが好きです。玄米も好きなんですけど、最近は健康を考えて、オートミールを取り入れ始めました。甘くしてもいいし、ご飯のように炊いて食べられるんですよ。水に浸してすぐ炊けるので、時間がかからないんです。それを撮影現場に持っていき、お弁当のおかずと食べたりします」

 そんな貫地谷さんだが、20代までは仕事第一だった。

 「それこそ10代から仕事をしていると、どこかで〝いい子でいなきゃ〞という自制心が働いてしまって。今となってはたまにはっちゃけて、ちょっとくらい失敗するのも大事だなと思うんですけど。そういう日も必要じゃないかって」

 そう思うのは結婚し、仕事への向き合い方が変化したせい。

 「これが私の人生のすべてじゃない、そう思ったらラクになりました」

 それはきっと大きな変化に違いない。でも彼女のように地に足をつけて自分のペースで一歩一歩、自力で人生を着実に前に進めていくことが人生を謳歌することにつながるのだろう。そこに異様な説得力を感じる。揺るぎなさがある。

 そんな彼女はこの先、どんなことに目を向けるのだろう?「今までやったことがないので、キャンプをしてみたいです。それから本当に、田舎暮らしもやってみたい! すてきだなと思う先輩たちは自分の人生を謳歌している感じがします。私も、自分の人生を大事にしよう。そう思っているんですよね」

 

『5つの歌詩(うた)』
●音楽:DREAMS COME TRUE ●脚本・総監修:岡田惠和 ●脚本:渡邉真子 濱田真和 ●制作:東北新社/MMJ
●出演:貫地谷しほり 高梨 臨 新川優愛 吉沢 悠 
●スターチャンネルEXにて独占配信中。8月13日、BS10 スターチャンネルにてTV初放送
https://www.star-ch.jp/dreamscometrue/

『空を読む』
13年前、インテリアデザイン会社の後輩、先輩として出会った歩実(貫地谷しほり)と泰輔(三浦貴大)。仲が悪いわけではないが、無趣味で仕事人間の夫とは交わす言葉も少なく、淡々と日々は過ぎていく。ある日、歩実はふとめくった雑誌に元カレのカメラマン、風見光太(渡辺大知)の名前を見つける―。BS放送と配信サービスを手がける「スターチャンネル」初のオリジナルドラマ。そのほか、DREAMS COME TRUEの「マスカラまつげ」「TRUE, BABY TRUE.」「何度でも」、新たに書き下ろされた新曲の歌詩に由来する全5編。
©2022 東北新社公式 

 

文/浅見祥子 写真/鈴木千佳

この記事のタグ

田舎暮らしの記事をシェアする

田舎暮らしの関連記事

三浦貴大さんインタビュー前編 「方言はからだになじむのに時間がかかるので、居酒屋がいちばん!」

バービーさんインタビュー「栗山町でやりたいことをいつも『妄想』して、どんどん膨らませています」

小林聡美さんインタビュー「自然の豊かなところに住みたいですけど、そういう時期が来たらいいな……と思うばかりで」

比嘉愛未さんインタビュー「沖縄の実家がないと、東京のジャングルでこうして仕事できていないかもしれません(笑)」

天海祐希さんインタビュー「ひとり暮らしでさみしい、 と決めつけるのもよくない。 全然さみしくないから!(笑)」

大竹しのぶさんインタビュー「からだを通して伝えていく、それが私の使命」

子育て移住にもオススメ! のどかな果樹園に囲まれ、教育環境も整った人気のエリア【広島県三次市】

移住者の本音満載の必読書『失敗しないための宮崎移住の実は…』/宮崎移住の「いいとこ」も「物足りないとこ」もわかるガイドブック

移住希望者の就職を専門家が寄り添ってサポート! 田村市の「お仕事に関する相談窓口」【福島県田村市】