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田舎暮らしの本 10月号

9月2日(金)
850円(税込)

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子どもの英語力をアップ! 無料の英語公営塾や子育て支援で、子育て家族が続々移住中【岡山県和気町】

田舎でのびのびと子育てしたい、しかし教育の面で都会の子に遅れをとるのでは……。そんな不安の解消に応える施策により、子育て世代の移住が止まらないのが岡山県和気町(わけちょう)だ。その、じつに楽しそうな学習の様子と、住民に好評な子育て支援を取材した。

掲載:2022年8月号

岡山県和気町
自然豊かな里山が、清流・吉井川とその支流を抱く和気町。駅周辺の市街地には病院や商業施設が充実し、田舎暮らし初心者向けの地域でもある。気候は穏やかで自然災害も少ない。人口約1万3600人。岡山駅から和気駅へ山陽本線で30分。車の場合は山陽自動車道和気ICを利用。写真は和気町でも有数の棚田が残る田土(たど)地区。

 

週3回の英語公営塾がなんと無料!

 人口約1万3600人の和気町は、直近6年間の移住者が約600人。その約7割が子育て世代というから驚きだ。

 彼らが和気町を選んだ理由は「自然災害が少ない」「移住受け入れ態勢がよい」などさまざまだが、目をひくのが「子育てや子どもの教育環境が整っているから」。一昨年のアンケートでは移住者105人の3割以上がそこにひかれたと回答している。

 その和気町の教育施策の1つが「無料」の公営塾。町民の小学5年生〜中学生を対象に、放課後の週3日、町内2カ所で指導が行われている。内容は英語教育と自習サポートが中心で、今年度の登録生徒数は77名。講師(取材時点で19名)への謝礼金などの運営費は和気町が予算を組んでいる。

和気町の公営塾は2カ所。和気・本荘エリアでは和気駅前の「ENTER WAKE」で開校。

「ENTER WAKE」での自習サポートの様子。建物は旧銀行をリノベーション。

佐伯エリアでは、大ホールや図書館などが入る学び館「サエスタ」が公営塾に。

 

これが授業? 公営塾の英語教育は個性的

 取材した日、JR和気駅前にある「ENTER WAKE」での英会話レッスンに来た小学生は16名。2〜3人のグループに分かれ、そこに5人の講師が代わる代わるやってくる。

 それは、どう見ても教育というより休み時間の談笑だった。学ぶのは数字など基礎的な英語だが、とてもにぎやかに、恥ずかしがらずに英語を使っている。

 公営塾では、「英会話レッスン」、英検(4級〜準2級)合格を目指す「英検対策レッスン」「全教科対応で講師ありの自習サポート」「オンライン自習室」がある。授業内容は一般的な学校や塾とはだいぶ違うようだ。

 「決まったカリキュラムはありません。一話完結の授業なので、来たいときに参加できる開かれた塾です」とは、この公営塾を担当する地域おこし協力隊員の久保田暁子さん。

 「この時期はこんな学びをするなど、大まかな目標は設定していますが、レッスン内容は講師にお任せ。その都度、子どもの興味なども考慮して決めています」

 例えば英会話レッスンであれば、実践的なコミュニケーションを重視。文法にこだわらず、間違えてもいいから英語を話せるようゲーム形式にするなど、授業にもさまざまな工夫や仕掛けをしているという。また、これは英会話レッスンに限らないのだが、教えるのは講師だけではないようだ。

 「違う学年の子が一緒に学ぶこともあるので、できる子、すでに理解している子が別の子に教えることもよくあるんですよ」

 こんな塾らしからぬ塾の教育効果だが、英検対策レッスンの場合、昨年は英検準2級受験の生徒6名が全員合格している。「この町の中学生の英語聞き取り能力は全国平均よりも上だと聞いています」

 公営塾に通う小学生には、外国人講師に英語で話しかけられても、パッと英語で返せる子が多いという。

 「でもこれは、幼稚園のときから外国人英語教師に接していることも要因なのだと思います」

生徒から見ると、講師は頼りになるお兄さん・お姉さん。心を開きやすいようだ。

小学生の英会話レッスンの様子。下の写真のように小グループで学ぶ時間が主になる。

小さなグループに分かれて、英語でのコミュニケーションを楽しむ。先生への質問も気軽にできる環境で、子どもたちは終始楽しそう!

「受け身でなく、自発的に取り組める子どもたちに!」
公営塾の講師陣。教育に興味のある地元ゆかりの学生やALT(外国語指導助手)など若い世代が多い。

ALTと公営塾講師のジャック・トナーさんは英国出身。「勉強はおもしろいが大切! ゲームをしたり、おかしな文章をつくったりしながら、子どもと英語をエンジョイしています」。

 

英語力向上と子育て支援で移住促進

 教育、特に英語教育推進を地方創生の柱にして子育て世代の移住を呼び込もうと、和気町では2017年から「英語特区」を導入した。例えば、ALT(外国語指導助手)については町内すべての小・中学校に各1名、3つの幼稚園・保育園には1名が常駐する。そして、小学1・2年生では年17時間の英語活動が、中学では学年ごとに年17時間のオーラルコミュニケーション(聞く・話す)の英語授業が、学習指導要領の枠を超えて行われている。年に一度はオーストラリアの小・中学校との遠隔交流授業もある。

 英語教育だけでなく、子育て支援もしっかりしている。放課後学習支援、18歳までの医療費無償(保険適用内)、幼稚園使用料と預かり保育料が無料(2019年から3歳以上の保育園の保育料も無料)、就学前の子どもについて「子育て支援センター」で気軽に相談できるなど、充実の内容だ。だしからこだわった地産地消の給食なども、田舎ならではの豊かさを求める人には魅力的だろう。

 また、和気町は子どもと一緒に遊べる自然が豊かだ。町内の小川には、それが市街地でも6月ごろはホタルが飛び交う。廃線跡のサイクリングロード(総延長34km)や、2カ所のキャンプ場、市街地そばの低山「和気アルプス」のトレッキングなどには、県外から訪れる人も多い。小さな子ども連れの家族には、ミニSLやゴーカートがある和気鵜飼谷(うがいだに)交通公園が人気だ。併設の屋内施設「和気町子どもひろば」には室内に砂場もある。

 そして、山間の町と思われがちだが、和気町から瀬戸内海へは車で約30分。そこでは名産のカキをはじめ、新鮮でお買い得な魚介が容易に手に入る。

和気小学校(211人)、本荘小学校(240人)、佐伯小学校(78人)、和気中学校(224人)、佐伯中学校(49人)、幼児施設3園(計326人)に各1名のALTが常駐して英語教育を行っている(カッコ内は2022年5月現在の生徒数)。

オーストラリアの小・中学校との遠隔交流授業は、町内の全小・中学校で2020年に計25回、2021年に計33回実施。生徒たちは通常の授業では味わえない達成感を得た。

毎年開催されている「English Camp」は、小学5年生~中学3年生を対象に1泊2日で外国人講師と英語を学ぶキャンプイベント。イベントの計画・実施には和気閑谷高校生も参加している。

就学前の子育て家族や妊婦さんの相談窓口として、助言や情報を提供する「子育て支援センター」は町内に2カ所ある。写真はその1つ「和気子育て支援センター」の様子。

「和気子育て支援センター」の隣にある屋内施設「和気町子どもひろば」。おもちゃのほかに、砂場やクライミングウオール、絵本があり、雨の日や真夏でも子どもたちがのびのびと遊べる。

上の支援センターや子どもひろばがある「和気鵜飼谷交通公園」。遊び疲れたり暑くなったら、冷暖房がある子どもひろばで休憩する家族も多い。

 

学力アップだけではない和気町の教育効果

 今年で6年目の公営塾では、うれしい現象が起きている。

 「英語教育に力を入れ過ぎると、将来、子どもたちは町外に出て帰ってこないのでは、という声もあります。町内で英語を活かす仕事はあまりないですから」

 とは、和気町教育委員会の日笠将吾さん。しかし今、公営塾で学んだ子が成長し、大学生になり、町外で暮らしているにもかかわらず、公営塾の日には講師として戻ってきてくれる。

 「人の流れが生まれ始めたみたいです。この1〜2年で、公営塾を通じた関係人口みたいなものができているのを感じます」

 公営塾は学びの場でありながら、地域とのつながりや人間関係のゆりかごでもある。受験教育とは一線を画す学びの環境が、和気町では醸成されつつある。

「いつの間にか、子どもたちは物おじすることなく英会話してます!」
和気町教育委員会の日笠将吾さん(右)と、地域おこし協力隊で公営塾の運営を担う久保田暁子さん(左)。久保田さんはオーストラリア暮らしの経験があり、英語が堪能。

和気町公営塾
英会話レッスン(50分)と英検対策レッスン(50分)は火・水曜日、自習サポートは火・水・土曜日。小学5・6年生と中学生が対象(小学生の自習サポートは土曜日のみ)。土曜日は、子どもたちが自ら企画立案したプロジェクト活動に、地域の人を巻き込んで取り組むことも。

問い合わせ/和気町教育委員会社会教育課
☎︎0869-88-9110
「 和気町公営塾」https://www.town.wake.lg.jp/enterwake/

 

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