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田舎暮らしの本 7月号

6月3日(木)
850円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

三浦貴大さんインタビュー前編 「方言はからだになじむのに時間がかかるので、居酒屋がいちばん!」

鹿児島県薩摩川内市(さつませんだいし)に400年以上続く「川内大綱引(せんだいおおつなひき)」に熱を持って取り組む鳶職の跡取り息子と、韓国からやってきた女性研修医。2人を取り巻く人びとを描く映画『大綱引の恋』に、三浦貴大さんが主演しています。オール鹿児島ロケを敢行。積極的に地元へなじみ、役柄そのもののように画面の中に存在する三浦さん。『チルソクの夏』『半落ち』の佐々部清監督の遺作となったこの映画に、どのように向き合ったのでしょうか?

本誌2021年6月号に掲載した三浦貴大さんのインタビューを前編・後編にわたってご紹介します!

「僕の好きな佐々部監督らしい、人と人との温かいつながりが描かれます」

 

単純ながら奥が深い綱引

「田舎の人が心ひかれるような笑顔を!」、写真撮影で三浦貴大さんにそう無理を言うと、「でもこれ、田舎へ行きたいと考える都会の方が読むんですよね」と笑いながら切り返されてしまう。そうして見せてくれた笑顔は、どこか人をホッとさせるよう。映画『大綱引の恋』での有馬武志役にも、そんな三浦さんの人柄が生きている。

映画の題材は鹿児島県薩摩川内市に伝わる「川内大綱引」。両軍合わせて3000名ほどが上方と下方に分かれ、2時間にわたって激闘を繰り広げる。

「祭りで勝ち負けを決めるって斬新ですよね。それで撮影前、開催日に合わせて現地に入ったんです。いやもう生で見た迫力は大変なもので!地元の方が祭りにかける思いが伝わりました。綱引って単純だけど奥が深く、戦術もいろいろあって。スパイもいるらしい(笑)。それだけ真剣なんですね」

 

生まれも育ちも東京の三浦さん。地方に暮らす人の祭りへの意気込みには驚きが多いかと思いきや、「わりと祭りが盛んなところで、昔からの友達に〝祭り大好きおじさん〞がいました(笑)」と言うから、「いつか自分も一番太鼓を」と祭りの花形を夢見ていた武志の思いも、理解できないほど遠くはなかった。

「一番太鼓は戦の総大将みたいなもの。地元の方と仲よくなってよく飲みに行ったんですけど、昔一番太鼓を叩いた方の小学生の息子さんが、武志と同じように『いつか自分も』と言っていて。地元でそうして引き継がれている大事な文化なんですね」

太鼓の叩き方は、武志役のモデルとなった人物から習った。

「バチの握り方もいろいろあるんですよ。腕が下がったら負けると言われるので、こうして(太鼓を頭上に掲げる仕草)1〜2時間叩きっぱなし。死ぬほどキツかったです……」

 祭りの撮影は祭り本番の6日後、エキストラ400〜500人を集めて行われた。

「地元の方の支援が厚くて。祭りは最後に綱を切って決着するのですが、その大綱が宿泊先のホテルのフロントに飾られていました。地元の方がいかに祭りを愛しているかが伝わりますよね」

この姿勢で2時間叩き続けるのは苦行のよう? ひたすら叩き続けて腕を鍛えた。

 

じつは難しいと思うご当地映画

映画は武志の母が鳶職・有馬組の女将も主婦業も「定年退職します」と言い出すことに始まる。武志も父も妹も、慣れない家事にてんやわんや。まるでコミカルなホームドラマを見ているよう。

「僕自身は掃除や料理を手伝ったり、実家にいたときも家事はやっていました。好きなので。1人暮らしのいまも料理は好きですよ、凝ったものはつくりませんけど」

母の文子(石野真子)が60歳の誕生日に、女将も主婦業も、突然の退職宣言! 武志も父も妹も振り回される。

武志は35歳で独身。跡継ぎを心配する父親から「早う嫁を」とせっつかれるも恋愛には疎く、けれど「人に見えないところでキチンと仕事をする、心配りができる人」でもある。三浦さんはもう、そんな武志そのまんま。

「その地域にずっと暮らしてきた人間を演じるとき、実際にその街を歩けるのはありがたいです。それで方言はからだになじむのに時間がかかるので、居酒屋がいちばん!地元の人ばかり10人に僕1人、ということもありました。父親くらいの年齢の方に〝ウチの娘かわいいでしょ?〞と紹介されたりして」

余計なことはせず画面の中にどっしりと立つ、あの在り方はそんな積み重ねがあればこそ。

ある日、武志はひょんなことで韓国人の新人医師ジヒョンと出会う。彼女の研修先は、『Dr.コトー診療所』のモデルとなった下甑島(しもこしきしま)の診療所。2人は不器用に思いを深めていく。

「僕、大学は寮で柔道部のやつと同室だったんです。彼が甑島出身で。台本にその島名を見つけたとき、難しい字なのになんですんなり読めるんだろう?と。それで同級生のことを思い出して、連絡しました。彼は鹿児島で消防士をしていて島にはいなかったので、お父さんに会いました。どうも!って(笑)」

 

できた映画は「こういう映画になったんだ」と感慨深かった。

「僕の好きな佐々部監督らしい、人と人との温かいつながりが描かれます。本当にいい映画だし、こういう映画が流行る日本であれ! 頼む!と思いました」

勇壮な祭り、離島の美しい海、おいしそうな食べ物。映画を見れば自然と、薩摩川内に行きたくなってしまう。ご当地映画としても理想的に思える。

「でも本来は難しいですよね。地域振興のためだけの映画になってしまうと、それはただの資料です。例えば『ローマの休日』を見ると、なんておしゃれな街だろうと思いますよね。キチンと背景を描き、そこに暮らす人の生活ぶりに合わせて映画として面白い物語をつくれば、その街をすてきと思っていただけるのかもしれません」

(後編につづく)

武志と出会う研修医のジヒョンを演じるのは、知英。武志の武骨なラブストーリーの結末は?

 

みうら・たかひろ●1985年生まれ、東京都出身。2 0 1 0 年に映画『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』でデビュー。最近の主な出演ドラマは『いだてん~東京オリムピック噺~』『エール』、映画『実りゆく』『大コメ騒動』。映画『妖怪大戦争~ガーディアンズ』が今夏公開。

 

『大綱引の恋』

●監督:佐々部清 ●出演:三浦貴大、知英、比嘉愛未、中村優一、松本若菜、西田聖志郎、朝加真由美、升毅、石野真子 ほか●5月7日より新宿武蔵野館ほか全国公開●ストーリー:有馬武志(三浦貴大)は鳶の親方である父の寛志(西田聖志郎)、母の文子(石野真子)、妹の敦子(比嘉愛未)との4人暮らし。ある日、母が定年退職を宣言して女将も家事も放棄、有馬家はドタバタに。そんななか武志は韓国から来た研修医のヨ・ジヒョン(知英)と出会って交流を重ねる。年に一度の大綱引の日が近づくなか、武志はジヒョンから、「あと2週間で帰国する」と告げられる。

https://ohzuna-movie.jp/  ⓒ2020映画「大綱引の恋」フィルムパートナーズ

 

文/浅見祥子 写真/鈴木千佳 スタイリスト/涌井宏美 ヘアメイク/KEN

ジャケット、パンツ、スニーカー/すべてROL吉祥寺店 ☎0422- 20-4555  シャツ/スタイリスト私物

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