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田舎暮らしの本 10月号

9月3日(金)
850円(税込)

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プロが教える! 古民家リフォームの重要ポイントと費用の目安

掲載:2020年10月号

古民家は、古きよき趣が楽しめる日本の宝。一方で、経年劣化が激しかったり、住みづらかったり、何らかの手を加えたほうが望ましいものがほとんど。そこで古民家改修の要点を、古民家物件のプロにアドバイスしてもらった。

物件選びの段階から改修の内容を意識しよう

改修費を大きく抑えるには、基礎、雨漏り、立地、周辺環境が大切

「格安で売られている古民家物件も見られますが、実際は数百万円あるいは1000万円以上かけて改修しないと住めないものがほとんどです」

 価格優先の安易な物件選びに注意を促すのは、白野産業の白野貴久さん。同社では欠陥があれば直してから売るため、物件価格は上がるものの、あとから高額の出費が発生するリスクはないという。

 改修費を抑えるための物件選びのポイントについては、次のように話す。

「まず大切なのは基礎部分です。大きな傾きは論外ですが、床が沈み込むなら要注意。構造材が腐っているか、シロアリ被害があるのかもしれません。もう1つが雨漏りの有無。特に屋根の改修はお金がかかるので、破損が広域におよぶ物件は避けるのが賢明でしょう」

 立地や周辺環境も事前に確認しておくべきだと言う。

「里山の場合、近くの山からの水が家の床下に流れ込むようだと湿気がたまり、カビ発生や家の傷みにつながります。下水道がない地域でのトイレの水洗化には浄化槽を設置しますが、排水先となる水路が遠いと配管に多額の費用がかかります」

 構造や環境に大きな問題がない古民家なら、適切に改修を施せば気持ちよく暮らせる。

 その一例が、今回取材した京都府中部の南丹市(なんたんし)郊外に位置する、築100年以上の元庄屋の住宅だ。菜園や竹林を含む1000坪近い敷地に3棟の土蔵が並び、約70坪の平屋の母屋がゆったりとたたずむ。

元庄屋の立派な邸宅。販売にあたって総額720万円をかけて最低限の改修を施した。

 特徴は、1尺以上あるケヤキの大黒柱や極太の梁など、しっかりとした構造。長さ約17mの土間も印象的で、台所部分を含めて既存のまま残している。

「伝統的な日本家屋を探している方も多いですから。現代的に暮らすなら、床を上げて板張りにしてもいいでしょう」

 一方で、雨漏りがあった屋根や天井、シロアリ被害があった床下は補修。和室のうち5室は畳を新調し、もう1室はフローリングに。これらを含めて母屋で約514万円、長屋門を合わせて総額約720万円におよぶ改修を実施済みだ。価格は1880万円。

「古民家ならではのよさを残しつつ、生活に支障がある部分に最低限の手を加えました」
 と、白野さん。市街化調整区域のため店舗などとしての利用はできないが、好みやライフスタイルに応じて、アレンジを楽しむ余地はまだまだ多い。

白野産業株式会社
白野貴久(しろのたかひさ)さん
白野産業は関西を中心に約半世紀、古民家など田舎物件を専門に扱ってきた草分け。社員の大半が宅地建物取引主任者で田舎の事情にも精通。 http://www.shironosangyo.com

よくある6つの古民家リフォームのポイント

【屋根】屋根の葺き替え工事は高コストになりがち

「改修工事で一番費用がかかるのは屋根。この物件くらいの規模になると、仮にすべての瓦を葺き替えれば800万円以上になります」と白野さん。通常は破損した瓦の交換だけを行うが、トタン屋根の場合、さび落としと塗り替え程度なら30坪程度で40万円ほど。

 

外壁】外壁の「浮き」や「ひずみ」は要補修のサイン

外壁の漆喰などは、手で押してふわふわとしていれば要補修。雨水が入り込んで下地と上塗りの間に隙間が生じ、放置すると剥落の可能性も。漆喰塗り替えなど左官工事だけなら1㎡3000円が目安。

 

サッシ】「趣よりも快適性」ならアルミサッシに交換

木製建具の不具合がなかったらそのまま使用することもできるが、断熱性などを考えてアルミサッシに交換するなら、掃き出し窓4枚で20万円が目安。逆にアルミサッシ化されているものを木製建具に戻す場合、同条件で30万円ほどと割高になってしまうことが多い。

 

【台所】かまどとシステムキッチンの併用もあり

この物件の台所には5基のかまどがあり、状態も良好なためそのまま残すことに。たとえ割れがあっても左官屋に依頼すれば比較的簡単に修繕できるという。窓辺のカウンターにはシンクが2槽。現代的なシステムキッチンに入れ替えるなら20万~30万円は必要だ。

 

【床】和室ばかりの空間にフローリングでメリハリ

古民家は居室すべてが和室ということも珍しくない。特に畳の交換が必要な状況であれば、居室の用途によってはフローリングにするとイメージが一新できる。大工に依頼する場合、床材にこだわらなければ6畳の広さで10万円余り。腕に自信があるならDIYで床板を張ると予算が節約でき、家への愛着も深まるはず。

 

【土間】広々とした土間は風情と不自由が背中合わせ

玄関から勝手口まで抜ける土間「通り庭」は、伝統的な日本家屋ならでは。風呂やトイレ、台所へ行くたびに履き物が必要になる。それが面倒なら、一部を板張りにする方法もある。ただし、居室と床の高さを揃えようと思えば、面積次第で40万~50万円の出費に。

 

【畳】新しい畳を入れて部屋の印象をリフレッシュ 

汚れやゆがみがひどい畳は、劣化した床下の大引や根太、下地の合板を取り換えたうえで新調。必要に応じて敷居も交換する。畳は上質なものだと1枚3万円以上するものもあるが、1万円前後のもので充分。畳の表面だけの問題であれば表替えで対応する。和モダンな雰囲気にアレンジするなら縁なし畳も検討を。

 

【天井】シミは雨漏り跡とは限らない

雨漏りを止めれば天井はそのままでも問題ないが、顕著な傷みや目立つ雨漏り跡があるなら張り替えよう。6畳の部屋で6万~8万円ほど。同じようなシミでも、ハクビシンなどの動物が入り込んでふん尿をまき散らしている場合は、清掃して張り替えるのが衛生的だ。

 

【壁】補修だけでなく、好みに応じて色の変更も

室内の塗り壁も手で押してふわふわするなど浮きが見られる場合は、下地からやり替える必要がある。じゅらく壁や漆喰壁などの左官工事は1㎡当たり3000円ほどが目安。表面的な汚れや傷の手直し、好みの色への塗装程度なら、DIYで挑戦してみるのも楽しい。

 

そのほかの古民家リフォームのポイント

【風呂】

昔ながらのタイル張りの風呂は味わいがある半面、カビやすく、冬に寒いという欠点も。ユニットバスにする場合、白野産業の事例では1坪サイズの本体+工事費用で150万円前後が一般的。まれに五右衛門風呂付き物件もあるが、割れている場合の修理は難しい。

 

【トイレ】

快適に暮らすなら水洗化がベター。内装全体を変えるなら、便器の価格と配管工事費用のほか内装工事費用が必要になる。配管は1m当たり1万円ほどで、下水などとの距離で金額が増加。目安は合計50万~60万円。

 

【給湯・浄化槽】

古民家では旧式ボイラーの利用も多く、壊れている場合は給湯器への交換がオススメ。一般的なガス給湯器で20万~30万円が目安。また、浄化槽設置は100万円前後だが、多くの自治体では数十万円の補助金制度を設けている。写真の物件では電気温水器設置済みだった。

 

【土台】

束(つか)などの土台が腐ったり、虫食いがあったりすると、床のたわみや家の傾きの原因になり、建物自体の強度にも悪影響をおよぼす。床や柱など木部に不自然な傷や木くずが見られたら、シロアリかキクイムシの可能性あり。問題がある場合は部材の交換や補強が必要に。

 

文・写真/笹木博幸

 

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