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田舎暮らしの本 10月号

9月3日(金)
850円(税込)

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由紀さおりさんインタビュー後編「チャレンジするってビビッドなこと。たらたらと生きていたら何も生まれない」

岐阜県西濃地区を舞台にした映画『ブルーヘブンを君に』(6月11日公開)で、青いバラを生んだ園芸家・鷺坂冬子を演じた由紀さおりさん。
「私が知らない私に出会いたいの」と、歌手生活50年を過ぎてもなお「どんどこ前へ」と進み続けています。
本誌2021年7月号で掲載した由紀さおりさんのインタビューの後編をお届けします!

(※前編の記事はこちら 由紀さおりさんインタビュー「残された時間にやりたかったことをやり遂げたい、そんな想いが伝われば」

 

『ブルーヘブンを君に』が、映画初主演となる由紀さん。写真提供/安田音楽事務所(撮影/鍋島徳恭)

 

答えを求め続けるそれが私の人生

『ブルーヘブンを君に』で由紀さんが演じる冬子さんは、朝のウオーキングが日課。由紀さんも昨年、コロナ禍での外出自粛期間中はせっせと家の周囲を歩いた。

「その道筋にあるお花屋さんで、通るたびにアジサイの鉢植えを買ったらもう7つにもなって。花芽を付けたいま、1年経っちゃったな……と。手をかけるとちゃんと花を咲かせてくれて。それを見て、私も咲かなきゃな、お水になるものは何かしら?って。いろんなことを思いながらベランダで植木を育てています」
 
パーソナルトレーナーについて週1〜2回、それ以外の日もコツコツと筋トレを続ける。それは「これから先の時間を充実させたい」から。
「例えば田舎で暮らすにも足腰を鍛えることが必須よね。でも私は……いまをトキメくブティックが近くにないと!」と言ってまたうふふと笑う。

由紀さんには華やかなステージが似合う。歌とのかかわりは幼稚園のころ、児童合唱団にさかのぼる。一生をかけられるものと早々に出合えた幸福をいま、どう感じているのだろう?

「ある種、足かせになったのも事実なんですよ。仕事を優先してがんばっちゃったぶん婦人病になり、子どもを持てない状況になったし。それは神様が、この道をまい進なさい!と言ってるんじゃないかと。2度の結婚を経てこの道を選んだことについては、なぜそれを選んだのか? 答えを出せないとダメだなと」

 

冬子と主治医の川越(大和田獏)との間には、患者と医者という関係だけではない絆がある。

 
由紀さんは画面で見るよりずっと小柄な印象。かわいらしい!と思うも、その語りは静かで落ち着いていて、長年プロとして一流の仕事を成し遂げてきた人だけに許される説得力に満ちている。
「極めるという言葉はちょっと恥ずかしいけれど、目指したものはこれだと言えるものを獲得しないと、選ばなかったことへの答えにならないと思って。選ばなかったことで傷つけた人もいるわけだからね。だからその責任をきちんと考えて答えを求め続ける、それが私の人生」 

芸事は無限。新たに始めたこともあって、もちろんそれについての答えはまだ出ない。出るかもしれないし出ないかもしれない。でも探し続ける。

「その生き方そのものが私だから。格好いい? でもキツイですよ。それにはやっぱり足腰がしっかりしてなきゃ。ハイヒールで歌えなくなっちゃったらどうしよう!?って(笑)。歌うときは喉だけじゃなくからだそのものが共鳴板になる、全身で歌うんです。そのため腹筋や背筋を鍛え、おへその下に息を入れて自分を支え、できるだけその息を細く長く出します。年を重ねるとそうした力が弱くなるけど、そのスピードを遅くしたいと思って努力するわけです」

年齢を重ねても前のめりに生きる、まさに冬子の姿と重なる。
「チャレンジするってビビッドなことじゃない? たらたらと生きていたら何も生まれないし。私の仕事は、人がやったことをやっても意味がない。だから誰も成就していないものに挑戦します。それで誰かが次に続いてやり遂げてしまったら、もう私の存在する意味はないですから。どんどこ先に行かなきゃダメなのよ〜」
 

孫の蒼太(小林豊)と弟の正樹(本田剛文)、自動車修理工の夏芽(柳ゆり菜)が、冬子の夢をかなえようと応援する。

 

個人事務所でありながら歌手生活15周年記念にはNHKホールでオーケストラをバックに歌い、このときに姉妹で童謡を歌い始める。コンサートの出前とCDの手売りで童謡アルバムを軌道に乗せ、1986年には日本レコード大賞企画賞受賞。米国のジャズグループ、ピンク・マルティーニとコラボしたアルバム『1969』が世界的ヒットを記録するなど、「どんどこ前へ」進む由紀さん。

「NHKホールのときはその前に、紅白歌合戦に落選してしまって。当時はお墨付きをもらえなくなったようで、私は歌っていていいの? 歌う意味は?と考えた。原点に戻って探そうと思ったんです。この人の仕事の仕方が好き、感性が好き、そういう仲間がたくさんいることも大事ね」
 
どんな仕事でも同じ。だから若い人が、上司からの食事の誘いを「それ仕事ですか?」と断るのはどうかしらと続ける。
「同じ世代の人とつるんでいるだけじゃダメです。やりたいことがあったら、経験値のある人の意見も必要よ。私が一人芝居をしたときは……」
一人芝居『夢の花― 蔦代という女―』に挑んだのは70歳!
「チャレンジに年齢は……関係ありますよ! からだは思うように動かないもん。でも私が知らない私に出会いたいの」
 
そうして着物を粋に着こなし、三味線の稽古に通う日々。
「三味線を持って漫談みたいなことをやってみたいの。演芸場に私が出たらどうだろう?って。やれるかやれないかはまた別で、面白いじゃない。夢を見るのは自由でしょ」

 

ゆき・さおり●1969年『夜明けのスキャット』で歌手デビュー。女優としても1983年に映画『家族ゲーム』で毎日映画コンクール助演女優賞受賞。1986年から姉、安田祥子と美しい日本の歌を次世代に歌い継ぎたいと活動を続ける。2011年発表のアルバム『1969』は全米iTunesジャズ・チャート1位ほか世界各国でチャートインを果たした。2012年紫綬褒章受章、2019年に旭日小綬章受章。

『ブルーヘブンを君に』
(配給:ブロードメディア)●原作・監督:秦建日子 ●脚本:秦建日子、小林昌 ●出演:由紀さおり、小林豊(BOYSAND MEN)、柳ゆり菜、本田剛文(BOYS AND MEN)、大和田獏、寺脇康文 ほか ●6月11日~イオンシネマ板橋ほか全国公開 ●ストーリー:青いバラの生みの親である園芸家の鷺坂冬子(由紀さおり)。ある朝、ウオーキング中に腹痛に襲われ、病院へ向かった。がんが再発し、主治医の川越(大和田獏)は冬子に余命半年と宣告する。迎えに来た孫の蒼太(小林豊)に池田山へ寄り道するよう頼んだ冬子は、「私、決めたわ。この空を飛ぶ」と宣言する。彼女はそのとき、50年ほど前の初恋を思い出していた……。 ⓒ2020「ブルーヘブンを君に」製作委員会

文/浅見祥子

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