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田舎暮らしの本 11月号

10月1日(金)
850円(税込)

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八ヶ岳山麓、地元の天然素材で石けんづくり【長野県富士見町】

掲載:2021年7月号

冷涼な八ヶ岳山麓の気候にひかれ、富士見町の移住支援事業に応募して移住した小古間かずささん。まちの生産者さんと知り合いになるにつれ、ヒマワリ油やハーブ、花、ハチミツなど地元素材が集まるように。2017年に町に香水工場ができたことで、自然派石けん「HOUR(アワー)」が立ち上がった。

町の材料を極力使い、「富士見 森のオフィス」にブランディングしてもらった「HOUR」を手にする小古間さん。「たくさんの人にかかわってもらうと、自分の能力以上のものができるのがすごい!」。石けんはネットでも購入可能。https://www.atelier-scramble.com

遠く富士山を望むことからその名がついた富士見町。

長野県富士見町(ふじみまち)
山梨県との境に位置する富士見町。生活圏が標高700~1200mに広がり、年平均気温は約10℃。高原野菜の栽培が盛んだ。八ヶ岳をはじめ、遠く富士山まで望むことができる。ICTを活用したテレワーク推進にも力を入れている。東京から中央自動車道経由で約2時間。

小古間さんお気に入りの、井戸尻(いどじり)遺跡周辺。「天気がよければ、南アルプスがバーッと見えるんですよ」。

 

支援制度を利用して、石けん屋として移住

 八ヶ岳南西麓に位置し、さわやかな気候と豊かな自然環境が魅力の人気の移住地・富士見町。5年前からはコワーキングスペース「富士見 森のオフィス」を活用した「移住&テレワーク支援制度」の事業もスタート。制度を利用した移住希望者を募集しているが、毎年定員を大幅に上回る応募があるという。

 2015年より富士見町で石けん製造「Atelier Scramble(アトリエ スクランブル)」を営む小古間(こごま)かずささん(45歳)も、移住のきっかけは、富士見町が募集していた新しい働き方を支援する事業への応募だった。

「当時、森のオフィスができる前だったので、富士見町では移住して自宅で仕事をする個人事業主を募集していました。町で用意した賃貸の家に入居でき、さらに家賃の補助をしてくれるという内容でした。それまで奈良県で石けん屋さんをしていたのですが、とにかく暑さが限界で(笑)。『富士見町なら石けんづくりに最適だ!』と思い応募しました」

 神奈川県横浜市出身で東京育ち。結婚してからは夫の出身地である奈良県で暮らした小古間さん。山好きな両親が富士見町の隣、原村の別荘地に移住していたので、夏は原村で過ごすことも多かったという。

「石けん屋は、暑いと商売にならないんです。だから夏は原村に2カ月ほど滞在して石けんづくりを行っていました。八ヶ岳山麓では夏にクラフト市が多いのも好都合でした」

 そんなときに富士見町の募集を見つけて移住を決心。夫は会社員だったが、周辺は精密機械業が盛んなため、同業種に転職することができた。

最初は賃貸で入った一軒家だが、昨年購入した。夫の松尾健太さんと縁側でホーリーバジルのお茶を飲む。

松尾さんの趣味は家庭菜園。夏は食べきれないほどの野菜が穫れる。畑の一角には小古間さんのハーブ畑もある。

 

みんなの思いを伝える「私たちの石けん」

 移住後、小古間さんは、地元の素材を使った石けんづくりを目指すようになった。あるとき、地元産のヒマワリ油を使った石けん教室を公民館で開いたところ、休耕田でヒマワリ油を生産している農家さんが参加してくれた。この出会いがきっかけで、小古間さんもヒマワリ畑の手伝いをさせてもらうことに。

 気候が冷涼で晴天率が高い富士見町では、花卉(かき)やハーブの栽培も盛んだ。ハーブはオイルに漬け込んで香りを移す。花は蒸留器で香り成分を抽出し、精製水の代わりとして使う。ラベンダーなど香りの強いものは、蒸留水にしても驚くほど濃厚な香りが残る。また、色が美しく柔らかいカレンデュラのような素材は、ドライにして直接石けんに混ぜ込むことも。保湿効果のあるハチミツは、地元の高校の養蜂部や卒業生の養蜂家から分けてもらっている。

 たくさんの生産者と知り合いになり、さまざまな素材で石けんをつくれるようになったが、自宅でつくる石けんは薬事法により「化粧品」として販売することはできない。そんなとき、小古間さんは町内に香水工場が新設されると耳にした。

「いきなり訪ねて『石けんづくりをしています。工場見学させてください』って(笑)。そうしたらたまたま社長さんがいらっしゃって、『ここで化粧品の石けんをつくっていいよ』と言っていただけて。すごいことが起こっているぞと思いました」

 自分で売る手づくり石けんとは違い、化粧品の石けんは、ショップなどに広く流通する。

「かっこよくしてあげようと思って『富士見 森のオフィス』に、商品名からコンセプト、ラベルまで、ディレクションをお任せしました。富士見町の石けんだから、町の人にブランディングしてほしかったんです」

 こうして生まれたのが自然派石けん「HOUR」だ。

 地元の素材で石けんをつくっていると、思わぬアイデアをもらうこともある。現在も、町内の竹林整備で伐採した竹で炭をつくっている人に声をかけられ、竹炭石けんを試作中だ。

「『この生産者さんがこんな思いでつくった材料です』ということを、使う人と共有していけたら。『HOUR』からHを取るとOUR(私たちの)になるように、私1人ではできない、地元みんなの石けんを目指しています」

「HOUR」の石けんは、「ヒマワリ」「ハチミツ」「ローズ」がある。ヒマワリ油、ハチミツ、ローズウォーターは、それぞれ地元のものを使用。

道の駅「信州蔦木宿(つたきじゅく)」にも商品を置いてもらっている。道の駅のスタッフと談笑する小古間さん。

道の駅に併設された「天然温泉つたの湯」。「よく温泉に入りに来ます」と小古間さん。
道の駅「信州蔦木宿」 ☎0266-61-8222 http://www.tsutakijuku.jp/

富士見町移住支援情報
コワーキングスペースを利用したテレワーク事業に注力

 2015年にオープンした「富士見 森のオフィス」は、コワーキングスペースと個室型オフィス、会議室などからなる複合施設で、テレワークやフリーランスで働く人などが利用している。新規就農希望者向けには、住宅と農地、研修、機械をパッケージ化した支援制度がある。住宅の新築、空き家改修をはじめ、協働パートナー団体による子育て支援も。

問い合わせ:富士見町総務課 ☎︎0266-62-9332
https://u-town-fujimi.jp

町の共同の仕事場「富士見 森のオフィス」。https://www.morino-office.com/

築約250年の古民家をリノベーションした移住体験住宅「夢想庵」。1人1泊4000円。

「中央本線富士見駅に移住相談所がオープンしました!」と富士見町総務課・伊藤一成さん。

 

文/はっさく堂 写真/村松弘敏

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