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田舎暮らしの本 7月号

6月3日(木)
850円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

【予算200万円】DIY経験しかないスタッフが廃材で家を建ててみた【5】

長らく引っ張らせていただいた「棟上げ」である。
しかし今回、ついに、その全貌が明かされる……、のか。
和田の反則的切り札や助っ人さんたちも登場だ。

念押ししたのに中山が遅刻

ゴールデンウイーク突入目前のある日。和田からこんなメールが来た。
「中山さん、明日はいつものように10時スタートでお願いします。連休のため、道が非常に混むと思いますので考慮して出発してくださいませ」(原文のママ)
まるで中山が当然、遅刻するかのような文面ではないか(プンスカ!)。実際、このときゴールデンウイークは常磐自動車道、東北自動車道ともに例年並みの「激コミ」だったんだが……。というわけで棟上げ当日。
案の定、遅刻した。
10時半ごろに到着すると、すでに助っ人のみなさんがコーヒーを飲みながらくつろいでいる。
水野「今度から遅刻したら原稿料の一部召し上げね」
中山「朝弱いんだよ~」
一同「言い訳無用!」
それはともかく、さすがに今回は、前回とは雰囲気が全然違う。いつもと異なる緊張がみなぎっているのだ。それはたとえて表現するならお祭り前の高揚感と、そして無事を祈るような厳粛な気分が入り交じった、そんな感じなのであった。
中山「とりあえず安全帽、被ろうっと」
中山が取り出したのは、転がっていた和田の自転車用ヘルメットである。
水野「なんで自分だけ、そんなのつけてんのよ」
中山「今までの経験で、ここの現場は絶対ヤバイと思ったもんで」
阪口「確かに今日が危険度マックスだろうね」
中山「そうそう。今日事故が起きなかったら、いつ起きるんだって感じ」
和田「大丈夫、大丈夫! 切り札用意してるから!」
切り札ってなんだ? 釈然としないまま、なんとなく「全員集合」的な雰囲気になる。
和田「ではみなさん! 安全第一で! お願いしますよ!」
「テキトー施主」和田の白々しい挨拶で作業がスタートした。

1人でヘルメットを被る中山。「君子危うきに近寄らず」である。

「いろはにほへと」そのあとはなに?

まずは柱を立てていくんだが、和田が作成した番付表に従って相番の振られた材木を拾っていく。番付表というのは建物の平面図を碁盤の目に区切り、縦横それぞれ 3尺(910㎜)間隔で番号を振ったものだ。
和田「建物の北から南へ『一、二、三、四』。西から東へ『い、ろ、は、に、ほ、へ、と』だから!」
阪口「なんで『いろは』順なの? わかりやすく『ABCD』にしろよ!」
和田「だって、いろはのほうが大工っぽいじゃん」
この和田の安易な考えが、あとで大変な問題を引き起こすことになる。

これが和田家の番付表。赤い四角が柱の位置。番付表の左上が「いの一番」。

ともあれ番付表に従ってジャンジャン柱を立てていく。一度ジグを通しているだけに、ホゾはすんなりとはまってくれる……、はずだったのに。案の定というべきか、ホゾがでかすぎて入らない柱もチラホラあるではないか。
もはや、「なんのためにジグをつくったのか、意味がわからない!」というありさまである。和田が得意のディスクグラインダーで調整するも、やはりはまらない。しかし今回は、建前の日だけに悠長に作業している余裕はない……。そこで登場したのが「シリコンスプレー」だ。シリコンスプレーは、シリコンの被膜で摩擦を軽減するもので、シュッとひと吹きするだけで建て付けが素晴らしくスムーズになるという魔法のスプレーである。これをホゾにたっぷりと吹きかけると……。
おお。なんということか。今まで和田の馬鹿力で、どんなに叩き込んでも入らなかったのが、ツルリとはまってしまうのである。
中山「現代ってのはいい時代だよねー。こういう文明の利器があるからテキトー施主でも家が建つ」
阪口「そうそう。金物もふんだんに使えるから、こんな『ブカブカホゾ』でもOKなんだからねー」
和田「そこ! なんか言った!?」
中山•阪口「いえ、なんでもないです」
というわけでジャンジャン柱が立っていったんだが、ここでお待ちかねの問題が発生した。例の「いろはにほへと」である。なにが問題なのかというと……。
「いろはにほへと」の次が出てこない!
中山「『ぬ』と『り』はどっちが前だっけ?」
水野「『る』の隣って『を』でいいんだっけ?」
この日の作業中、現場のあちこちで「いろはにほへとちりぬるを……」とブツブツ暗唱する光景が見られたのであった。
阪口「だからABCのほうがいいって言ったじゃん!」
水野「みんながわかるようにしないとね」
そう。作業現場では、万人がわかるようにしないといけないのが鉄則なのである。
しかし「テキトー施主」和田の「いろは事件」はこれだけではすまなかった。和田の「テキトーぶり」が「倍返し」となって助っ人さんに跳ね返ってくるのは、もう少し先のこと……。

丸太柱を運び出し、番付表に従って立てていく。

親子で柱を運ぶ。康陽もあと少し大きければ戦力になるんだがなあ。

柱を立てたら、前後左右の垂直を決めて仮筋交いで固定する。仮筋交いはその辺の木っ端で充分。

入らないホゾを削る。ここでもグラインダーが大活躍である。しかしそれでもはまらないときはシリコンスプレーにご登場願う。ホゾ全体にスプレーすると、あら不思議。ツルリとはまってしまうのだ。

三脚の足が1本短い! 安全第一でなんとかして

ようやく柱が1列並んだので、試しに桁(けた)を載せてみることになった。その桁に使っている材料は、もともとは古民家の土台として使われていた材で、「せい」が8寸(約24.2㎝)、長さが13尺(約4m)もある極太桁である。
これを地面から3m以上も人力で持ち上げるのは至難なので、単管パイプで三脚を立てて電動ウインチで持ち上げることにした。長さ6mの単管パイプを連結して要の部分に滑車を取り付け、電動ウインチで桁を吊り上げるのだ。
しかし、要の部分は自在クランプ3つで固定し、ワイヤーをくくり付けただけという恐ろしくいい加減なものである。ホントに大丈夫なのか? 荷重に耐えきれずに空中分解とかしないのだろうか。恐る恐る三脚を立ててみるが、それ以前に、なにかがおかしい。
中山「……なんかこっちに傾いてるんだよなあ。錯覚かな」
阪口「いや、明らかにこっちに傾いてる。なんでだろ」
その原因は移動時に一度畳んだときに判明した。
足が1本だけ、30㎝ほど短いのである。そのせいで三脚のバランスが悪く、足場によっては倒壊してしまいそうになるのだ。
中山「おい! この三脚、1本だけ短いんだけど!」
和田「なんとかして!」
中山「なんとかって……、オマエ!」
阪口「安全第一じゃなかったのかよ!」
和田「安全第一で、なんとかして!」
一同「なんじゃそりゃあ 」
思わずズッコケる一同であった。

脚立の上からカケヤで叩き込む。このくらいなら中山でも、できなくもない。

こうして柱が1列立ち上がった。問題はここからである。

ウインチとチェーンブロック用の三脚を組む。1つには要の部分に阪口提供のちゃんとした製品である「三脚ヘッド」を装着。もう1つはサビだらけの自在クランプ。

6mの単管パイプは非常に重くて、男3人がかりでようやく立てることができるほど。立ち上がると右のような感じである。どことなく頼りない感じがするのは気のせいと信じよう。

切り札がさっそうと登場
気を取り直して、バランスをとりながら三脚を所定の位置に組み、さっそく極太桁材を吊り上げる。左右で水平になるようにゆっくり上げていき、柱の上に載せて上からカケヤで叩き込む。が、しかし入らない。やはりホゾが太すぎなのだ。
「おい! 入らないぞ!」「そっち先に入れて!」「ダメ! こっちも入らない!」など、悲鳴のような怒号が飛び交う。これはいったん下ろすしかなさそうだ……。と思っていたら、助っ人のカズさんが、ヒョイと桁の上に飛び乗ったではないか。
一同「おお~~~~っ!」
歓声が沸き上がるなか、カズさんはカケヤを手に桁の上をヒョイヒョイと渡っていき、カケヤを振り上げてホゾを叩き込む。
和田「すげー。さすが本職」
阪口「え? 本職?」
和田「そうだよ。セルフビルドで家建てて、そのまま建築のお仕事に就いちゃった人だから」
そして和田は付け加えた。
和田「こういうときこそ、ジョーカー切らないとね!」
そう。和田の切り札とは、本職のカズさんのことだったのだ(後日、カズさんが建てたご自宅の見物に行ったら、その完成度の高さにたまげた中山と阪口であった)。
カズさんのおかげで命拾いした中山と阪口ではあったが、しかし釈然としない部分も残った。
中山•阪口「それって、反則なのでは!?」
次回も、怒濤の棟上げは続く……。

巨大な桁にスリングを取り付け、いざ、吊り上げ開始。

安全圏でウインチを操作する阪口の嫁さん華奈子ちゃん。

前後左右から柱を叩いてホゾを合わせる。ウインチで吊っているので作業も安全だ。

最終兵器カズさんのこの活躍で、和田邸の棟上げは爆発的に進捗。

1列目の桁が上がったところで記念写真。しかし、最大の難関が次に待ち受けている……。詳細は次回!

文/中山茂大 写真/阪口 克 イラスト/和田義弥

人力社

ライター中山とカメラマン阪口、 ライター和田の旅とDIYを得意とする3人組トリオ。「人力山荘」シリーズでは中山の母屋リフォーム、中山のアネックス新築DIY、和田の自宅新築DIYを連載。阪口も自宅をDIYで新築している。

人力社HP➡www.jinriki.net

阪口HP➡https://www.sakaguti.org

和田HP➡http://www.wadayoshi.com

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