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ポットン便所の快適化大作戦/移住希望者最大(?)の悩みを解決!

掲載:2019年7月号

築年数の古い田舎物件に「ポットン便所」は珍しくないが、洋式の水洗トイレに慣れた人の多くは尻込みしてしまう。そこでそんな人でも抵抗感なく使えるようにポットン便所をリフォームしよう。コストを抑えて「簡易水洗」にする方法と、「水洗トイレ」にする方法を、田舎暮らしライターの山本一典さんに教えてもらった。

【ポットン式は欠点多し。リフォームが現実的!】

 1960年代まで、日本のトイレは汲み取り方式のポットン便所が主流だった。その汚物を畑の肥料としてリサイクルさせる習慣は戦後に消滅したが、シニア世代なら汲み取り専用のバキュームカーは覚えているはず。もう遺物と思われるかもしれないが、じつはポットン便所もバキュームカーも農村では現存している。築後40年以上の古い田舎家なら、汲み取りのほうが多いくらいだ。

 汲み取り便所には、いくつかの欠点がある(図1参照)。まず外便所だと冬の寒さが半端でなく、臭突がないものは悪臭も強い(あっても先端の電動ファンが老朽化するので数年に1度の交換が必要。工事費の目安は1万円弱)。古い便槽だと汚物が跳ね返ったり、大雨や台風であふれ出すケースもある。要するに、快適なトイレではない。我慢して使っている移住者もいないわけではないが、リフォームを考える人がほとんどだ。

寒い夜中の利用がつらい外便所。小便用と便用が分かれているものもある。

和式汲み取りトイレは足腰の弱ったシニアには向かない。定価5000円程度のポータブルトイレを置くだけで解決する。

【安くて快適な簡易水洗。汲み取りの仕組みを要調査】

 なるべくコストを抑えたい、と望む人におすすめなのが簡易水洗トイレ。筆者の田舎家でも18年前から導入しているものだが、少量の水でし尿を便槽に流すトイレだ(図2参照)。スタイルは水洗トイレに似ているが、仕組みそのものはポットン便所と同じ。水を流せる専用便器の購入が必要で、プラスして洗浄ガン付き、暖房便座付きの製品を選んだほうがいい。価格は合計10万円くらいからだ。洗浄ガンとは高圧の水で汚物を流し落とす装置で、快適性が大幅に向上する。寒冷地では暖房便座も必要だろう。もちろん、簡易水洗トイレに電気や給水設備は不可欠。その工事ができないことはあり得ないが、費用は敷地などの条件によって前後すると考えたほうがいい(表1参照)。

見た目は水洗トイレとあまり変わらない簡易水洗だが、右側に洗浄ガンが付いているのは水力が弱いため。

レバーを握るだけで高圧の水が出る洗浄ガン。簡易水洗トイレには絶対にほしい付帯設備だ。

暖房便座付きの製品には、コンセントと温度調整機能が付いている。寒冷地はこれにしたい。

 便槽は既存のものを使うか、新しいものに取り換えるかを慎重に判断する必要がある。通常、大人の平均排泄量は1日約1330cc。簡易水洗の場合はこれに大便時500cc、小便時1200ccの計1700ccの洗浄水量が加わる。つまり、1人当たり1日合計3030cc、月に換算して約100ℓだ。

 しかし、実際はこれ以上の量になるケースがほとんど。というのも、都会の水洗トイレに慣れた人は、簡易水洗でもレバーを何度も回してしまう癖がついているからだ。わが家は現在、夫婦2人で暮らしているが、汲み取りは約2カ月に1回で550ℓくらい(費用は1回6000円弱)。汲み取りのスパンはあまり長過ぎると忘れがちになるので、これでちょうどいいと思っているが、家族が多い・便槽が小さい、という家は便槽の取り換えを検討すべきだろう。既存の便槽の容量は、売主か貸主が汲み取りの領収書を保管していればわかるはずだ。

 汲み取りのシステムは、市町村または広域行政組合によって異なる。わが家も以前は毎月15日までに電話すれば月内、それを過ぎると来月にずれ込んだが、現在は次週にバキュームカーが来るようになった。電話のタイミングを間違えると一時使用不能になりかねないので、仕組みを調べておくことが肝心だ。

【都会と同じ使用感は公共下水道か農集排】

 都会の住民が当たり前のように使っている水洗トイレ。それが可能なのは、トイレおよび台所・風呂・洗面所などから出る生活雑排水を終末処理場へ運ぶ公共下水道が整備されているからだ。日本では1970年代から全国各地で建設されたが、現状はどうか。表2を見てほしい。全国平均で78.8%に達しているものの、人口5万人未満では51.1%。地方で当たり前のインフラではない。

 もし取得した田舎物件がすでに下水道を使用していたら、下水道使用料を払うだけでいい。表3は福島県会津若松市の例だが、5人家族で月4000円程度。さほど大きな負担ではない。問題は新たに下水道を使うため配管工事が必要になるケースで、引き込み管の長さによって20万〜30万円程度かかる。また、下水道が整備されたばかりの区域では受益者負担金が必要。土地面積×単価で決まるが、会津若松市の場合は200㎡×400円で8万円となるようだ。

 

 農村には農集排(正式には農業集落排水施設)を整備している地域もある。これは1000人以下の村落を対象に、トイレの水洗化と生活雑排水の処理を行う施設。使用感は下水道と変わらないが、戸別浄化槽の汚泥を処理するし尿処理施設に運ばれるので、仕組みそのものは共同の浄化槽みたいなもの。受益者負担金、配管工事、使用料がかかるのは下水道と同じで、地域によって価格差がある。

農業集落排水施設は共同の浄化槽のようなもの。雨水処理はしないが、使い勝手は下水道と変わらない。

【補助金も活用できる合併浄化槽が現実的!】

 表2に戻ると、浄化槽の普及率は人口5万人未満で19.8%。人口が少ない自治体でトイレを水洗化するには、浄化槽設置がいちばん現実的だ。以前はトイレの排水だけを処理する単独浄化槽もあったが、すべての排水を処理する合併浄化槽に比べて能力が8分の1と低いため、製造中止になった。浄化槽を設置するには乗用車1台分程度の空きスペースが必要で、浄化槽設備士が工事を監督する。

 ここで合併浄化槽の仕組みを簡単に説明しよう(図3参照)。浄化槽に流入した生活排水はろ過され、まず酸素を必要としない嫌気性微生物で汚水を浄化。次にブロワーで空気を送り込み、好気性微生物でさらに浄化する。ここには温度の高い風呂の水も流入するため、微生物が活動しやすい。最後に消毒もするので、きれいな水が放流される。

 価格目安は表4で示した通りだが、浄化槽の設置、便槽や単独槽の撤去に補助金を支給する自治体が増えてきた。ごく一部だが、市町村が主体となって合併浄化槽を設置する自治体もあり、その場合は住民の負担が約6分の1にまで軽減される。

 汚水処理のインフラ以外にも、トイレの水洗化には配管工事や便器設置などの工事が必要(図4と表5参照)。50万円くらいかかるので、浄化槽と合わせて約100万円が1つの目安だ。

 浄化槽設置後も保守点検、清掃、法定検査、汚泥汲み取りなどが必要(表6)。維持管理費用の負担も頭に入れておこう。

 

文・写真/山本一典 イラスト/関上絵美

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