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田舎暮らしの本 5月号

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田舎暮らしの本 5月号

3月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

山・高原・海の田舎物件探し/値段はもちろん、近所付き合いにも大きな違い

掲載:2021年8月号

人が暮らす田舎は大まかに山、高原、海の3エリアに分けられる。自然環境や地域の成り立ちが異なるので、田舎物件の取得方法も分けて考えたほうがいい。ここでは3エリア別に、物件購入のポイントやメンテナンスについて本誌ベテランライターが解説する。

【山】物件は空き家バンクで、冬季は寒冷地対策を!

 山村に明確な定義があるわけではないが、農林水産省が「食料・農業・農村白書」で用いている中山間地域がほぼ同義語と考えていい。これは農業地域区分で都市と平地を除いた中間および山間農業地域を指し、日本の面積の約7割。そこに7分の1ほどの国民しか住んでおらず、過疎地域ともいえる。川沿いに集落が形成されたところが多く、まさに田舎の原風景が残る地域だ。

 過疎地域には宅建業者がほとんどいないので、田舎物件購入の窓口は必然的に自治体の空き家バンクが中心となる。この取り組みは地域住民を増やすのが主な目的であり、賃貸を含めて価格の安い物件が手に入りやすい半面、定住して共同作業に参加するといった地域社会のメンバーとしての心構えも求められる。空き家バンクを利用するにあたって、地域のルールを守るという誓約書の提出を求められる場合もあるので、不動産業者から買うような消費者感覚は捨てることだ。二地域居住を対象に含めている自治体もあるが、一部に限られる。

 過疎の農村は、標高300〜600m程度のところにあるものが多い。大部分が真冬に-5℃以下に達する寒冷地なので、住宅を断熱仕様にする、薪ストーブの導入など暖房を工夫する、水道管に保温材や電熱ヒーターを巻くなどの対策が必要になる。地域によってもやり方が異なるので、地元の人に詳しく話を聞くことだ。

【高原】大型別荘地が多い地域。価格設定はやや高めに

 高原とは、一般的には標高が600m以上あって、連続した広い平坦面を持つ地域のこと。日本人には避暑地のイメージが強いが、じつは戦後に農地の開拓が盛んに行われた場所でもある。重機がない時代に家畜を使ってやせた土地を開墾するのは想像を絶する過酷な作業で、先人の農地を受け継ぎレタスやキャベツなど高原野菜の一大産地に成長させたところも少なくない。山村とは比べものにならないほど高額の農業収入があるので、新規就農ができるのは那須高原など一部に限られる。

 むしろ田舎暮らしの場として有力なのは、高度成長期にリゾート地として開発された高原地帯だ。山梨の清里高原、長野の軽井沢高原、静岡の朝霧高原などが有名だが、その多くがブランド化した大型別荘地帯になっている。そのため主な購入窓口は民間の宅建業者だ。バブル崩壊後に価格が大幅下落し、別荘定住という新しいライフスタイルも定着したことから、田舎暮らしを始めるハードルは低くなった。最近は仕事と休暇を兼ねたワーケーションの場としても注目を集めている。

 地価は山村に比べるとかなり高めで、家も高気密・高断熱住宅が一般的。それなりの初期費用を見込んでおくべきだ。人気の高い八ヶ岳南麓高原などでは、温暖化の影響もあり、標高1000m以上の別荘地に新築・定住する人も増えている。

【海】海の眺めや物件相場が、地形や立地で異なる

 海辺には漁村集落と別荘地が混在しており、前者は空き家バンク、後者は宅建業者で物件を探しやすい。いずれも地形や立地によって海の景色、物件相場、楽しみ方などに違いがあり、次の4タイプに大別できる。

① 海辺の高台に立つ家

 大海原が広がる眺めは文句なしで、海から朝日が昇るか夕日が沈む風景が望める家もある。ただし、物件相場が高く、傾斜地になりがちで建築費用も高くつく。

② やや内陸寄りの高台の家

 ベランダや窓から海が見える家を探せる。釣りやサーフィンを楽しむにも都合がいい。デメリットは海の眺めがいいと高額になりやすく、坂道があると高齢者には移動しづらいこと。

③ 砂浜近くの平地に立つ家

 目の前に海があれば庭の一部のような風景になり、海釣りを楽しむにも好都合。ただし、物件は少なく、塩害や砂害の影響を受けやすい。

④ 砂浜からやや内陸の家

  低価格の物件を見つけやすく、少しの移動でマリンスポーツが楽しめる。デメリットは地勢が平地なら海の眺めは期待できないこと、海まで徒歩圏でなければ車が必需品になることだ。

海岸付近で起きやすい自然災害や塩害に注意

 海の近くは台風の影響を受けやすいので、なるべく開口部の少ない家、屋根勾配の緩い家を選んだほうが無難だ。また、地震による津波、強風による高波、低気圧による高潮も無視できないので、ハザードマップでリスクをチェックしておこう。

 海辺物件でやっかいなのが塩害。鉄やアルミなどの金属部分が錆び付く現象で、室外機などに耐塩仕様の製品を使用したり、屋根や外壁などを定期的に水洗いするといったメンテナンスが欠かせない。また、家や庭に砂が入ってくる砂害の影響も受けやすく、こまめに清掃することが必要になってくる。傷みの大きな中古物件は補修が大変なので、なるべく空家期間の短い物件を選んだほうがいい。

 海岸付近の物件で意外な盲点になるのが駐車スペース。道路が狭く、敷地に車を止められない物件が少なくないのだ。その場合は周辺に駐車場か空き地があるか確認しよう。

 

文/山本一典 イラスト/大沢純子

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