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田舎暮らしの本 12月号

11月2日(火)
850円(税込)

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カール・ベンクスの古民家がある集落に、遊びに来ませんか?【新潟県上越市下牧集落】

戸数5軒の新潟県上越市柿崎区下牧集落に建てられた館。それは古民家再生に実績のあるドイツ人建築家、カール・ベンクス氏の作品だ。その建設には「移住者を呼び込みたい」という地元住民・中村さんの熱い思いがあった。

掲載:2021年10月号

移住者のためにカールベンクスハウス「いなば」を建てた下牧(しもまき)町内会長の中村和彦さん(写真左)と地域おこし協力隊の筒井惇貴さん。

 

新潟県上越市 柿崎区下牧集落
日本三大薬師の1つ米山薬師が立つ米山の麓にあり、登山者のお茶屋を営んでいた集落の歴史を持つ。現在の戸数は5軒。日本海、頸城(くびき)平野、妙高山系の絶景が見渡せる。命が芽吹く春から静寂に包まれる冬まで、四季折々の日本の原風景がある。信越本線柿崎駅よりバスで約20分。北陸自動車道柿崎ICより車で約15分。

 

自己資金を投じて古民家を芸術的に再生

 実家の農業を継ぐためにアフリカから上越市の下牧集落に戻った中村和彦さん。かつて20軒あったふるさとの集落は、わずか4軒になっていた。何年かすると、集落は中村さんの家だけになってしまうかもしれない。

 下牧には、山岳信仰の信徒をもてなした集落としての歴史もある。ふるさとを守りたいと思う中村さんは、移住者を増やすことを考えなければならなかった。

 幸い、山の麓という立地から景色は抜群によい。四季がはっきりしていて、裏庭で山菜が採れ、棚田や森など美しい風景が広がっている。自然を愛し、四季とともに暮らすには絶好の土地だ。

「ここに移住者を呼び込むには、家が必要だ」と考えた中村さん。だが「それが普通の家では難しい」とも感じていた。

 そんなある日、中村さんは古民家再生のテレビ番組を見て、実績のあるドイツ人建築家、カール・ベンクス氏を知る。古民家はじつは宝物であり、それを後世に残すことは意義のあることだという思いに共感。相談すると「空き家のうち2軒は再生できる」と言われ、自己資金を投入し、カールベンクスハウス「いなば」の建設を2018年4月に着工した。

 改修した古民家は地域の庄屋が住んでいた家を譲り受けたもの。100年前に建てられた家には土間や台所、馬小屋など非常に大きな空間が残されていた。

 改修は、古材を再利用できるようにていねいに解体し、古材はきれいに洗って磨き直し、傷んだ部分は継ぎ足す。通常より高めのベタ基礎を打ち、頑丈な家を建てていく。だが、古材には独特の自然なゆがみがあり、1本1本現場合わせで削りながら新しい材料と組み上げるという大変な労力と時間がかかった。

「いろんな方が手伝いに来てくれて。地域おこし協力隊の方が着任するなど、新しい出会いもありました」

今回、改修した古民家は過去にも建て替えをしていて、使われている古材は200年ほど経たもの。ていねいに解体し、使える古材は洗って、必要なところには新たに継ぎ足すなど加工。現代の技術も組み合わせて建てることで、100年、200年と生きていける家にした。

 カール・ベンクス氏には、好きなように仕事をしてもらった。

「彼は古民家再生で実績のある建築家。できあがる家は、アーティストの作品ですから、自由にやってもらいました」

 約1年半かけて完成したカールベンクスハウス「いなば」は、色鮮やかな洋館の外観を持ちながら、随所に古民家が持つ「和」の風情を感じさせるものとなった。さらに床暖房をはじめ、気密性の高いドイツ製の窓やイタリア製のタイル、スウェーデン製のシステムキッチンなど、現代の生活にマッチしたセンスと快適さも追求している。周囲のどこか懐かしさを感じさせる風景と相まって、心からリラックスできる暮らしやすい環境だ。かつての集落の暮らしの歴史と現代の感性が融合した、古くて新しい、これからの時代を感じさせる家となっている。

「この家に住む方が決まったら、もう1軒の改修も始めたいですね。新しく移住する人が来れば、新しいことが始まる。それはいつだって、素敵なことです。とても楽しみにしています」

「長い時を刻んだ古材の柱や梁が印象的でしょ」と中村さん。内壁は調湿効果・消臭効果・耐火性に優れた珪藻土だ。床暖房で冬の対策も万全。

玄関ドアには集落にあった蔵の扉を利用。家のあちこちに昔の板戸や蔵の戸などを上手に活用し、歴史を感じさせる。

約20畳の小屋裏はフリースペースで、ロフトやトイレも設置可能。「隠れ家アトリエや子ども部屋など、自由に楽しめます」と筒井さん。

イタリア製のタイルとスウェーデン製のシステムキッチンで、オール電化。調理しながらも外が見える。

2階に設置された浴室。窓の外には雄大な自然の風景が広がる。

カール・ベンクス氏 建築デザイナー。1942年、ドイツ・ベルリン生まれ。パリで建築デザインオフィスに勤務後、空手を学ぶために日本大学に留学。日本に住んで27年の間に再生した古民家は、現在60軒。
カールベンクスアンドアソシエイト㈲ 
https://karl-bengs.jp

 

コンビニも海も車で15分。四季を楽しむ暮らし

 2020年、下牧集落へ移住した地域おこし協力隊の筒井さんは、下牧集落の印象を「毎朝、旅行先で目覚めるような開放感があり、住民の皆さんも、とてもフレンドリーです」と語る。

「私のように新しい住民を受け入れることはもちろん、湿気やすきま風など、古民家のデメリットをなくした〝新しい古民家〞の建築など、美しい自然のなかで時代の先を見据え、進化しようとしています」

 下牧集落は山の中のイメージだが、意外なことにコンビニまでは車で15分ほど。高速道路のインターや特急の止まる駅も近い。小・中学校へはスクールバスが運行され、診療所のある集落までは約3kmと、暮らしやすい環境が整っている。

 米山の麓に近いため、下牧集落の田んぼや畑に使う水は、とてもきれいな湧き水。だから、作物はどれも雑味がなくおいしい。隣の集落ではイワナの養殖も行われている。

 頸城平野や日本海を見下ろす絶景を楽しみ、季節の移ろいとともに訪れる鳥の歌を聴きながら、山の幸に舌鼓を打つ。雪の季節、静寂のなかで味わう熱燗は格別なものになるだろう。雪は多いときは2mも積もるが、今は機械もよくなり、道路の除雪も万全だ。

「山の麓の集落ですが、日本海まで車で15分ほど。アウトドアスポーツもたくさん楽しめます」と中村さん。

「田舎暮らしでやりたいことは、なんでもできると思います。カールベンクスハウスで快適に暮らしながら、新しい集落を一緒につくってみませんか。ぜひ一度、下牧集落へ来てください」

道路から見上げたカールベンクスハウス。すぐ下にはバス停が設置されている。

1階の大きな窓は結露に強いドイツ製ペアガラス。家からフラットにつながっていて、まるで巨大な風景画のようだ。

このドイツ製の窓は気密性・断熱性が高く、寒い冬でも室内は暖かい。「内開き窓は、開けたままでも防犯上安心できますよ」。

施工した大工さんが遊び心で、昔の板戸や蔵の戸でつくった階段箪笥。

地元の方と井戸端会議。住民は皆さん気さくで、笑顔がはじける。左端は隣の集落の数少ない子ども。

下牧集落は多くの登山客が訪れる米山の麓にある。緑の木々と田んぼの中に家が点在。

 

下牧集落の移住支援情報
まずは訪ねて、下牧集落の住み心地をチェック!

 下牧集落では、中村さんが中心になり、移住サポートを行っている。集落の暮らしを実際に体験できる「いなか体験ハウス」もある。また、上越市柿崎区の農家による「柿崎を食べる会」では、水野・下牧集落を巡る1泊2日のツアー(日帰りも対応)も行っている。
お問い合わせ:中村和彦 ☎︎080-5474-7124

ツアー問い合わせ:柿崎を食べる会 ☎025-520-6003
http://www.yoneyamamai.com/kakizaki/

幼稚園を改築した「いなか体験ハウス」は、1日1人1500円。農業やそば打ち、雪掘りなどの体験メニューも。

ツアーでは田植えや稲刈りが体験できる。

 

文/丸山和昭 写真/伊平裕哉

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