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最新号のご案内

田舎暮らしの本 7月号

6月3日(木)
850円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

ヒロシが教えるキャンプのコツ&愛用品大公開!

2020年3月号別冊付録

大好評となった2020年3月号別冊付録『ヒロシのソロキャンプStyle Book』を公開!

一人でキャンプをしてみたら
みんなでやるよりずっと楽しかった

 小学生のときに親と行ったのが初めてのキャンプですね。自然の中の秘密基地っていう感覚で、めちゃくちゃ楽しかった。夏休みに同級生と近くの野山でキャンプしたこともあります。テントなんてないから家にあった蚊帳を持っていってね。その中にお菓子とか、漫画とかいっぱい広げて、もうそれだけでわくわくしましたね。子どもながらに自由を感じていたんでしょう。
 でも、それからキャンプにはずっと行っていなかったんです。再び行くようになったのは、芸人になって「ヒロシです」のネタでブレイクしたあと。5〜6人の仲間とわいわい賑やかなキャンプをやっていました。それはたしかに楽しかったんですけど、そのうちにちょっと疑問も感じるようになって。みんなで日程を調整したり、食べたくもない料理を作ったり、人と合わせなくちゃいけないことが多すぎるんです。言ってしまえば面倒くさいんですよ。
 それで、あるとき一人でキャンプに行ってみたんです。いや〜、よかったね。自分がやりたいことを、やりたいときにすればいいんだから。何をしてもいいし、何もしなくてもいい。僕が求めていたのはそういう自由だったんです。
 YouTubeを始めたのは、仲間が集まったときに見て盛り上がるため。完全に自分の楽しみです。それが、たまたまキャンプブームが来て、たまたまみんなが僕の動画を見てくれて、仕事につながっています。
 僕が一人でキャンプに行くようになった頃は、まだ、ソロキャンプっていう言葉もなかったけど、今ではキャンプに限らず何でもソロっていうのが世の中で認められる時代になったでしょ。いいことだよね。一人ってそれなりに責任も伴うけど、圧倒的な自由がありますから。

ヒロシ●1972年、熊本県生まれ。九州産業大学卒業。ヒロシ・コーポレーション所属。2004年頃、ピン芸人として「ヒロシです」のフレーズで始まる自虐ネタで大ブレイク。以降お笑い活動のほか、俳優、ラジオパーソナリティ、執筆活動など幅広い分野で活躍。近年では趣味であるソロキャンプのYouTube「ヒロシちゃんねる」が人気を集め、チャンネル登録者数が59万人を突破。近著に『働き方1.9〜君も好きなことだけして生きていける〜』(講談社)、『ひとりで生きていく』(廣済堂出版)、『ヒロシのソロキャンプ-~自分で見つけるキャンプの流儀~』(学研プラス)がある。

寝るのもくつろぐのもこれひとつ
快適! ハンモックスタイル

 キャンプっていうと多くの人はテントで過ごすイメージを持っていると思いますが、僕はハンモック派。夜もそのままゴロンと横になって星を眺めながら寝るんです。
 テントの閉ざされた空間とは違って、ハンモックって体がむき出しでしょ。それで自然の中で寝るわけですから、僕も最初は不安がありました。でも、使ってみるとこれが非常に快適なんですよ。
 ソロキャンプを始めたばかりの頃って、やっぱり夜って怖いじゃないですか。ちょっとした物音にも敏感になっちゃってね。テントの中でナイフを握って寝てたりしましたもの。ところが、ハンモックだと何か物音がしても、自分の目ですぐに確認できるから。逆に安心して眠れるんですよ。
 ハンモックのいいところは、テントに比べて設営や撤収が断然早いこと。2本の立木の間に紐を渡すだけですからね。慣れれば5分もかからずに設営できますよ。雨の日はタープを張れば問題ありませんし、蚊帳が付いているので、夏の虫にも悩まされません。
 ハンモックは横になって寝るだけじゃなく、低い位置に設置すればチェアの代わりにもなるんです。テントを使っていたときは、必ずイスを持っていたんですけど、今は必要ありません。荷物も少なくなるし、ハンモック自体テントに比べてずっと軽いんで本当に楽なんですよ。

ハンモックの収納袋をロープに吊り下げておき、コッヘルや焚き火台、テーブルなどを広げるたびに出る収納袋をまとめて入れておく。

ハンモックを吊るす立木の間隔は3〜4m。ロープは地面から1m30〜1m50㎝程度の場所に結ぶ。体重をかけたとき地面から10〜20㎝ほど浮く感じがいい。

休みたくなったら、ブーツも脱がずに着の身着のままで寝てしまう。このラフさがハンモックのいいところ。

火おこしは段取り八分
たっぷり時間をかけて準備する

 薪を集めて、火打ち石で火をおこすって、単純に楽しいんですよね。でも、大勢でキャンプに行くと時間をかけて火おこしなんてやってられないでしょ。なぜ、ソロキャンプかっていったら、誰にも気を使うことなく、夢中になってこういう遊びができるからなんですよ。
 この黒い布はコットンの端切れを炭化させたもので、チャークロスっていいます。火打ち石の小さな火花でも着火しやすく、消えにくいので、サバイバル的な火おこしでは欠かせないアイテム。チャークロスは自分で簡単に作れます。小さな穴を開けた空き缶にちぎったボロ布を入れて火にかけるだけですから。
 薪はたっぷり集めて、太さごとに分けておきます。こうした準備をしているか、いないかで火おこしは決まります。マッチやライターのように簡単じゃないけど、自分で火がおこせたらかっこいいでしょ。

ナイフで薪を割る。バトニングという技術で、ナイフの刃を木口に当て、背の部分を丸太で叩きながら刃を食い込ませていく。薪が安定するように、別の太い薪などを土台にするとよい。

木口に鉈(なた)の刃を軽く食い込ませたら、薪ごと降り上げて、土台にしている薪に何度か打ち付けると割れる。

薪を集めたら太さごとに分けておく。焚き付けとなる割りばしサイズの小枝、次に火を移す指の太さほどの細い薪、さらにゴボウくらいの太さ、手首ほどの太さまで4種類ほどを用意しておく。細い薪ほど燃えつきやすいので多めに用意する。

火打ち金、火打ち石、麻紐、ファイヤースタータ、火吹き棒、白樺の樹皮が入った火おこしキット(右)と丸い缶に入ったチャークロス。コットンの端切れを炭化させたもので、火打ち石でおこす極小の火花をしっかりキャッチしてくれる。

小さな火をじっくり育てる
それが最高のエンターテインメント

 火打ち石を火打ち金で擦ると火花が飛びます。この火花がチャークロスに移ると火種ができるので、それで乾いた落ち葉など燃えやすいものに着火させるんです。落ち葉に火がつくと大きな炎が上がりますが、燃えやすい素材は、燃え尽きるのも早いので、その火が消える前に次の燃料となる小枝を入れてやらなくてはいけません。そうやって少しずつ太い薪に火を移して、焚き火を大きくしていくんです。
「キャンプで何をするんですか?」って、よく聞かれるんですけど、何もしないですよね。キャンプってカヌーとか、釣りとか、そういうアクティビティと一緒に楽しもうという人もいるけど、実はそんなことをやってる暇はないんですよ。火をおこして、めしを作ったらそれだけで時間は過ぎていくから。焚き火ができればいいんです。一晩中火をいじっているだけで楽しいんだもの。

火打ち石をチャークロスで包む。このとき火打ち石の頭がちょっと飛び出すようにして、そこを火打ち金で打つ。

小さな火花がチャークロスに当たると着火する。1粒の小さな火種ができる。

チャークロスの火種を枯葉で包み、空気を送る。煙が立ち上がってきたら枯葉を焚き火台に移す。

枯葉を追加し、さらに空気を送る。煙の量が多くなり、途端にポッと炎が上がる。そうしたら準備した細い薪から順番に投入していき、炎を大きくしていく。

一晩中、満足いくまで焚き火を楽しみたければ、無駄に大きな炎を上げないことだ。燠(おき)が充分できれば、火はまたすぐにおこすことができる。

料理は手早く簡単に
空腹が満たされればそれで充分

 料理はこだわる人が多いけど、僕はまったく興味がないんです。手早くできて、お腹がいっぱいになればいい。なるべく手間をかけたくないので、肉を焼くだけっていうのが多いかな。分厚いステーキ肉ね。ビジュアル的にもいいでしょ。こだわっていることといったら、ちょっと高価でもいい肉を買うってことくらい。やっぱり、うまいよ。味付けは塩コショウとか、焼き肉のタレとか。料理好きの人って調味料もいろいろ揃えているけど、僕が持っていくのは、塩とコショウとショウユと油だけだからね。調理器具も小さな鉄板1枚で済むし。
 料理は基本的に焚き火でやるけど、朝、火をおこすのが面倒なときはバーナーも使います。
 カップラーメンで済ませることも多いですね。みんなで行くと、絶対に文句を言われるけど、ソロなら何を食べようが僕の自由ですからね。

焚き火台の上に薪を2本平行に置けば、それでゴトクになる。枝を使って鍋を吊るせるクッキングハンガーやトライポッドをつくるのもよい方法。

手の込んだ料理をしなくても、いい食材を使えば焼くだけで充分うまい。コッヘルで米を炊くことも多い。

常備している調味料は油と塩とショウユとコショウのみ。少量を持ち歩くのに100円ショップのケースが意外と使える。

カップラーメンやコーヒーの湯を沸かすのに小さなケトルがあると便利。もとはグレーだったが焚き火の煤(すす)ですっかり黒くなった。

コーヒーは好きだが、豆から挽く手間をかけるより、手早く飲めるインスタントを好む。最近のドリップバッグコーヒーも手軽でおいしい。

新品の輝きよりも美しい
焚き火とオイルの黒い艶

 道具選びって楽しいよね。気になるものがあると、ずっとネットで探しちゃうもの。実際、いろいろ買って使いましたけど、使い勝手とか道具としてのカッコよさとか、あれこれ試行錯誤して、今のスタイルに落ち着きました。
 鉈なんかも何本か買ったんだけど、結局気に入っているのは、友達のじいさんが使っていたというもの。譲ってもらったんです。皮のカバーはキャンプ仲間の手作り。なんていうかな、使い込まれた道具って味わいがあるじゃないですか。
 ブランケットは、韓国のミリタリーショップで500円くらいだったかな。これが意外と使い心地いいんです。道具って何も高いお金を出していいものを揃える必要はないんですよ。コッヘルなんて家の鍋を持ってくればいいんだから。小学生のときは、そういう道具でキャンプしていたんだもの。

ヴィンテージもののオイルランタン。明るさや性能は最近のガスやガソリン、LEDランタンに及ばないが、優しいオレンジ色の光が醸し出す雰囲気は抜群。道具は機能や性能がすべてではない。

折りたたむとA4サイズに収納できる焚き火台「ピコグリル」。軽くて、コンパクトであることは道具選びの重要な要素のひとつ。

アイテム探しには海外のインスタグラムやYouTubeも参考にしている。これもそのひとつ。カップやカンティーン(ボトル)、ボトルストーブ(ゴトク)がセットになった「パスファインダー カンティーンクッキングセット」。

行錯誤を繰り返して選び抜かれた道具と完成された美しいパッキング。何気なく置かれたザックがアウトドアの熟練度を語っている。

自分だけの道具で
オリジナリティを演出

 アウトドアショップに並んでいるような道具は、できるだけ使いたくないんですよ。誰も持っていないようなアイテムを海外のサイトで見つけたり、いわゆるアウトドアものじゃない道具を流用したりして、オリジナリティを求めたい。
 例えば、マグカップはどこかの蚤の市で手に入れたんだけど、ドリップバッグコーヒーがぴったり収まるんです。シェラカップにしているのは韓国のマッコリカップ。グローブは土木作業用の皮手袋ですし、ノコギリはあるホームセンター限定のオリジナルカラーです。そうやって、自分の色を出していくんですよ。

海外の軍が使用しているカラビナとパラシュートコード。定番のアウトドア用ではなく、ほかのもので代用することでオリジナリティを出す。

ファーストエイドキットの中身は常備薬、絆創膏、軟膏、かゆみ止めなど。アルミのケースはアメリカの量販店で手に入れたもの。

キャンプ仲間が誕生日にプレゼントしてくれた「ヘレ・ナイフ ディディガルガル」。木製の柄は使い込むほどに手になじむ。

シェラカップとして使っているのは韓国で手に入れたマッコリカップ。安価なアイテムで代用できるものを探す。食事をするときに小さなテーブルもあると便利。

焚き火には欠かせない火バサミは、木の取手にこだわって探し求めたもの。一般的なトングタイプではなくハサミのような構造になっており、使い勝手も抜群。

道具を置く場所も決まっており、鉈や火バサミなどは必要なときにすぐ使えるように右手を伸ばして届くところに並べている。

ソロだからこそ
かっこよさにもこだわりたい

 キャンプってただ楽しいだけじゃなくて、僕はかっこにもこだわりたいと思ってます。今、こうして地べたに座っているのもかっこつけ。下に敷いているブランケットが、結構気に入っているんだけど、それを見せたいっていうのもある。火おこしだって、マッチやライターを使うより火打ち石のほうがかっこいい。
 全体の統一感も大切。このスタイルで、赤とか青のガチなアウトドアウエアを着ていたらおかしいでしょ。キャンプってさ、汚れる遊びなんだから、きれいなウエアなんていらないんですよ。僕は中古屋に並んでいる古着をよく買って着ています。土木作業員が着ている現場服もいいよね。別にアウトドアものである必要はないんだし。人とかぶりたくない。気を使うとしたら、なるべくコットンなどの燃えにくい素材を選ぶってことかな。化学繊維は火の粉が飛ぶとすぐに穴が開くんですよ。

ウエアや道具は統一感も重要。アウトドアウエアに多い派手な配色よりもナチュラルな色合いのほうが自然に溶け込めるような気がする。

かっこよさにこだわることは、そのスタイルを機能的にもする。ハンモックの張り方から、薪の燃やし方、ひとつひとつの道具が置いてある場所まで、すべてが美しくまとまっている。

もっと一人の自由を求めて
手に入れたオレの山

 ソロキャンプって、どこでやるかが難しい。山や森は基本的に誰かの所有地だから、当然、勝手に入っていくわけにはいかない。で、基本的にはキャンプ場になるんだけど、なるべく人がいないところがいい。とにかく一人になれるところ。それが絶対条件。一人になりたくてキャンプに行くんだからね。
 それから僕はあまり開けて見晴らしがいい場所より、木々に囲まれた森のほうが好き。ハンモックを張れて、薪になるような枝がいっぱい落ちているところね。
 ただ、最近は爆発的にキャンプが流行っているでしょ。いままであまり知られていなかったようなキャンプ場まで人が来るようになっちゃって、困っちゃうんですよね。それで昨秋、自分の山を買ったんです。誰の目を気にすることもなく、一人で自由にキャンプをするためにね。

自然の中にいると本当の自分に戻れる気がする。利便性はいらない。限られた道具で工夫するのが楽しい。

何をしてもいい圧倒的自由がソロキャンプにはある。昼間から寝るときもあるし、YouTubeを見て過ごすこともある。自分がやりたいことをすればいい。

文/和田義弥 写真/鈴木千佳 取材協力/南アルプス三景園オートキャンプ場(山梨県北杜市武川町柳沢烏帽子3601-1)

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