田舎暮らしの本 Web

  • 田舎暮らしの本 公式Facebookはこちら
  • 田舎暮らしの本 メールマガジン 登録はこちらから
  • 田舎暮らしの本 公式Instagramはこちら
  • 田舎暮らしの本 公式X(Twitter)はこちら

田舎暮らしの本 5月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 5月号

3月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

定年後に菜園生活を実現! 食の宝庫で農家民宿を開く【広島県世羅町】

掲載:2021年7月号

野菜や果物はもちろん、畜産物からワインまでさまざまな食の宝庫として名高い広島県世羅町。駅伝のまちとしても有名だ。観光にも力を入れており、花や果樹の観光農園も多い。このまちをセカンドライフの舞台として選び、農家民宿を営む松河さん夫妻を訪ねた。

「地域の人に助けていただきながら楽しんでいます」と松河さん夫妻。畑仕事を終えてウッドデッキでくつろぐ時間が好きだという。

中国山地の分水嶺に当たる世羅町は、良質な水資源と昼夜の寒暖差に恵まれた県内有数の農業のまち。米、アスパラガス、ナシやブドウなど多彩な作物が育てられ、直売所や観光農園が豊富。大阪から山陽自動車道を経由して約3時間30分。

500坪の敷地を生かし、野菜と花々の楽園に

 広島県を代表する農作物供給基地である世羅町へ2014年、兵庫県から移住したのが、松河敬吾(まつかわけいご)さん(67歳)・君子(きみこ)さん(64歳)夫妻。大手外食企業の定年退職を機に行動を起こした、と敬吾さんは振り返る。

「退職後は自然豊かな場所で暮らし、農業がしたいと考えていました。花屋で勤めていた妻も、庭に花をいっぱい植えたいという夢があったんです」

 候補地として敬吾さんの実家がある広島県三次市(みよしし)の周辺で探し、世羅町の空き家バンクで理想的な物件を見つけた。敷地約500坪と広く、価格は300万円。700万円ほどをかけて快適な仕様へ改修し、ウッドデッキと椅子やテーブルはDIY好きの敬吾さんが自作した。

自宅は空き家バンクで見つけた300万円の2階建て6DK。大きめの納屋や蔵が付属。「世羅町の空き家バンク」 https://www.town.sera.hiroshima.jp/soshiki/17/19.html

 荒れていた庭は小型のパワーショベルを借りて雑草を一掃し、半分ほどを活用して花畑へ。同時に菜園を少しずつ整え、野菜や果樹を植えた。現在は近隣2カ所の休耕地も借り、夫婦で多品種の栽培に励む。

「今年はジャガイモだけでも種類。野菜の一部は市場で販売もしますが、売り上げは種苗代を補う程度で、経費を考えると大赤字(笑)。防獣ネットがイノシシに破られ、収穫期を迎えたジャガイモやカボチャが食べられるなど苦労は絶えませんが、気にせず楽しんでいます」

タマネギ、ダイコン、ホウレンソウなど、低農薬で多品種の野菜を栽培している。

敷地内の菜園スペースは約200坪。そのほか合計約300坪の畑を近隣2カ所に借りている。

力仕事は敬吾さん、植え付けなどは君子さんが担当。移住当初には50万円ほどをかけて道具や機械を揃えた。

つくりたいと思ったら何でも植えるという夫妻。こちらはかわいい花が咲いたイチゴ。

野菜に加えて果樹も植えている。一角には野菜くずを処理するコンポストを設置。

左のペットボトルはブルーベリー酢、右2つはラッキョウのリンゴ酢漬け。

収穫した野菜の一部は6次産業ネットワークのアンテナショップ「夢高原市場」へ卸す。
https://www.yumekougen-ichiba.jp/

 3年前には「まちに少しでも貢献できれば」と、農家民宿「華樹庵(かじゅあん)」を開業。無理のない範囲で客を受け入れている。

 日々の活動を通じた人との交流の喜びに加えて、松河さん夫妻の至福のひとときが夏の夕暮れ。畑仕事を終えてウッドデッキで一杯やりながら花と緑が彩る庭を眺めていると、「この瞬間のために移住したんだなあ」としみじみ実感するという。

客室を兼ねた和室。書棚には趣味で集めた小説や漫画がぎっしり。農家民宿「華樹庵」は1泊2食付き8400円~。☎︎090-1448-1868

山菜ちらし寿司、ブロッコリーとレタスのサラダ、新タマネギの天ぷらほか。宿泊者にも自家製野菜をたっぷりと提供。

扇義則さん・珠絵さん夫妻(写真右)は、松河さんの農家民宿を利用して感動し、神奈川県から移住。義則さんが勤める「花夢(かむ)の里」のネモフィラ畑にて。https://sera.ne.jp/km/

 

【技あり!松河さんの菜園の工夫】

自家製液肥で野菜の甘味が向上

 松河さんが使用している「えひめAI(あい)-2」は、愛媛県工業技術センターで開発された発酵肥料の一種。納豆、ヨーグルト、ドライイースト、砂糖、水を混ぜ合わせてつくるもので、畑に散布すると野菜の生育促進や土壌改良の効果が期待できる。

「野菜が柔らかく仕上がり、甘味が増すんです」と松河さん。

材料が食品のため安心・安全。1カ月ほどで完成し、約3カ月間使えるという。

 

【松河さんの移住データ】

●改修にかかった費用(概算)

約700万円

上水道引き込み、トイレ水洗化、 ガス工事、浴室改装、太陽熱温水器設置ほか。

●地域でかかる費用

自治会費…年1000円ほど

神社費…年5000円など

●参加している行事

とんど・新年会、花見、田植え後の泥落とし、地蔵盆祭り、芋煮会、 忘年会、年2~3回の草刈りなど。

 

【世羅町“農”トピックス】

プロの指導付き!「ひまわり村農業体験農園」がオープン

 住民組織の中央自治会では道の駅世羅と連携し、農村交流の場にもなる体験農園「ひまわり村農業体験農園」を今年4月に開設。利用者は約30品種から希望の野菜を選び、環境に優しい農業に取り組む。「植える、食べる、お裾分けするという楽しみを味わって」と農園主の橋川正治さん。1区画年3万3000円。

お問い合わせ:中央自治会事務局(世羅町中央自治センター内)  ☎︎0847-22-1368

次回募集は検討中。農園主の橋川さんが月2回ほど講習・指導を行う。

 

文/笹木博幸 写真/福角智江

この記事のタグ

田舎暮らしの記事をシェアする

田舎暮らしの関連記事

クラインガルテン、編集部が選ぶオススメ施設8選!

【物件情報】岡山県笠岡市の瀬戸内海が一望できる家

定年後に買った小さな田舎家。庭いじり、菜園、陶芸、夢見た暮らし【長野県青木村】

定年目前で退職し、小さな映画館で笑顔を届ける【大分県豊後高田市】

5000坪の原野を1人で開墾。動物たちと暮らす第二の人生【北海道弟子屈町】

山里の古民家で水石ギャラリーを営む二拠点生活【群馬県下仁田町】

海・山一望の大規模ニュータウン「伊豆下田オーシャンビュー蓮台寺高原」には素敵な物件がたくさん【静岡県下田市】

子育て移住にもオススメ! のどかな果樹園に囲まれ、教育環境も整った人気のエリア【広島県三次市】

移住者の本音満載の必読書『失敗しないための宮崎移住の実は…』/宮崎移住の「いいとこ」も「物足りないとこ」もわかるガイドブック