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田舎暮らしの本 12月号

11月2日(火)
850円(税込)

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大学を出てマタギに入門。森で生きる知恵を体得して生き物たちとタメを張る!【秋田県北秋田市】

掲載:2021年10月号

森吉山(もりよしざん)をはじめとする奥羽山系の山々が連なり、面積の大半を森林が占める北秋田市。なかでも特に山深い阿仁(あに)地区は、集団でクマなどの狩猟を行う「マタギ」発祥の地といわれている。この地へ移住し、自らもマタギとして活動する若者を訪ねた。

自宅から10分ほどの森で、オオバクロモジを刈り取る益田光さん。クロモジはつまようじなどにも使われる香り高い樹木で、阿仁では古くからお茶にして飲まれている。

秋田県北秋田市
雄大な森林と田園風景が広がる北秋田市は、白神山地、十和田湖、八幡平などの観光地へのアクセスも良好。写真は戸鳥内地域の棚田。東京駅から秋田新幹線で秋田駅へ約4時間、秋田駅から奥羽本線で北秋田市(鷹ノ巣駅)へ約1時間30分。

 

自然とともに生きる人生の師との出会い

 「東京にいたころは、1時間半かけて山へ行き植物に触れていましたが、今は朝起きて、パジャマのままでも山へ行けてしまう。幸せなことですよね」

 そう話すのは、広島県出身の益田光(ますだこう)さん( 27 歳)。東京農業大学森林総合科学科へ進学したのち、秋田県へ移住した。

自宅兼工房。秋田県内でも随一の雪深い地域。冬にはコピー機も凍るほどの冷え込みとなるが、星空が美しく、夏は屋根に上って流星群を眺めることも。

 秋田との出会いは、樹木の種子や発芽の研究をしていた大学時代。ひょんなことから、北秋田市阿仁地区に暮らす鈴木忠義さんのもとを訪れた。

 「鈴木さんとお会いしたのはほんの2時間でしたが、植物が大好きで、この地で採れるオオバクロモジでお茶をつくって販売していることなどを聞きました」

 かねてからの益田さんの夢だった、自然のそばで暮らすこと、植物を活かしてビジネスをすることをすでに体現している鈴木さんの生き方に感銘を受け、移住を決めた。移住後は、週3日間、営林署で非常勤作業員をやりながら、2020年には「もりごもり」という個人事業をスタート。そこでは、鈴木さんから技術を受け継いだクロモジ茶を製品化し、販売している。

刈り取ったクロモジの枝や葉を持ち帰り、粉砕機にかける。粉砕機は地元の方に譲ってもらった。

粉砕したクロモジは、室内で2週間ほど乾燥させる。

乾燥させたクロモジをさらにミキサーにかけ、袋詰めして完成。

製品となったクロモジ茶「マタギのお茶っこ」は、レモンバームのようなさわやかな風味。現在は地元施設などで購入できる。今後はインターネットでも販売予定。

 マタギ発祥の地でもある阿仁地区。益田さんも狩猟免許を取得し、マタギとして地域の仲間とともにクマ猟などに参加している。

 「家から一歩出れば、クマやタヌキがいるのは当たり前。人間も動物と同じ森の構成員であり、この森で生き抜くためには、銃で獲物を捕らえることだけでなく、山での歩行技術、森での道具の使い方、道の選び方など、マタギの術を体得して生き物たちとタメを張れるような存在でいることが必要なんです」

 鈴木さんに出会った際、この土地にいるマタギの人数を質問したところ、「みんなマタギだ」と返答されたことは、今でも印象に残っているという。

マタギ猟での益田さん。実際にクマを授かる経験もしている。(写真提供/益田さん)

マタギの道具。猟銃、猟友会のキャップとベスト、無線、ナガサ(狩猟刀)。

師匠の鈴木忠義さんから譲り受けたクロモジ製のカンジキ。

   そんなマタギの生き方を学びながら、春は山菜採り、夏は渓流釣り、秋はキノコ採り……と、目の前の自然を目いっぱい楽しんでいる益田さん。

 「それでも僕は、山から授かったものだけで生きているわけではありません。川で釣るイワナもうまいけれど、魚屋で買うサバもおいしい。今日はカップラーメンでもいいかな?という日だってある。僕の場合、自給自足というよりは、選択肢が多いという感覚。決して、スーパーで買い物をする暮らしを否定するわけではないんです」

 現在はマタギを本業とする人はいなくなったが、その精神を受け継ぎながら、山から授かる恵みを活かした商品開発を模索中の益田さん。目下の目標は、その売り上げの一部を集落の活動費に充て、再びマタギを生業としていくことだという。

自宅玄関には山で採取した樹木の幹のコレクションが並ぶ。

夏は近所の川へ渓流釣りに。早朝は釣れやすくイワナは入れ食い状態となることもあるが、賢いヤマメとの知恵比べも楽しい。

 

北秋田市 移住支援情報
支援制度を多数準備して移住者を歓迎中!

北秋田市では、県外からの移住者には引っ越し費用や普通自動車免許取得費用などを最大20万円助成。また、奨学金を返還している45歳未満の方に対しては返還額の一部を年額最大20万円助成。ほかにも、お試し移住体験の方には最大5万円(1世帯)を補助するなど、さまざまな支援制度を用意している。FacebookやYouTubeで北秋田のディープな情報を発信中なので、ぜひチェックを!

移住・定住支援室 ☎︎0186-62-8002
https://www.city.kitaakita.akita.jp/genre/teiju

山とともに生きるマタギ文化が今も残る。

伊勢堂岱遺跡がユネスコ世界文化遺産に登録。

大館能代空港がある北秋田市へは羽田空港から70分! 首都圏との行き来も便利です。(移住・定住支援室の皆さん)

 

文/矢吹史子 写真/船橋陽馬

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